言葉は子どもに「自由」を与える

密着レポート(31)


野村 滋 (のむら・しげる)  株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

その幼稚園は「奇跡の幼稚園」と呼ばれる。神奈川県川崎市の「風の谷幼稚園」は、大人の都合がまかり通る幼児教育に疑問を抱いた一人の女性が、資金も資産もない状態から創り上げた。「人間として誇りを持って生きていくために、必要な力を身につけさせる」という信念を持つ天野優子園長は、日々どのように子どもと接し、子どもはどのように成長していくのか。設立当初から同園に密着する筆者のレポートから、「誇りある子ども」の姿が明らかになる。

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先生: 「これは海の中に住んでいます」
子ども: 「それは魚ですか? 貝ですか? 動物ですか?」
先生: 「いい質問だね。これは動物です」
子ども: 「食べ物はどんなものを食べますか?」
先生: 「海の中に住んでいるアミなんかを食べるかなあ」
子ども: 「先生、アミってなんですか?」
先生: 「アミっていうのは、エビが小さくなったような生き物のことを言うんだよ」
子ども: 「口はとがっていますか、とがっていませんか?」
先生: 「うーん、とがってないよ」
子ども: 「それはどんな色をしていますか?」
先生: 「うーん、黒いのもいれば灰色のもいるよ」
(中略)
子ども: 「それは潮を吹きますか?」
先生: 「はい、吹きますよ」
先生: 「さあ、わかったかな? じゃあ、みんなで答えを言ってみよう。せーの・・・」

 この先生の「せーの」の掛け声に応じて、子どもたちは一斉に答えを口にする。(さて、読者のみなさまは答えがお分かりになっただろうか?)

「くじら!」
「はい、正解です。ちなみにくじらってのはね、家族で生活するんだよ・・・・」

先輩教員(左)と新人教員(右奥)と天野園長(右手前)

 と、この後、先生は子どもたちに「くじら」の生態を説明し始める。子どもたちは「へー」と興味津々に聞きいっている・・・。実はこれはゴールデンウイーク中に行われた風の谷幼稚園の新人教員研修のひとコマ。風の谷幼稚園では、年長児クラスを対象に1年間かけて「言葉の指導」というカリキュラムを行うが、そのカリキュラムは写真にあるように、絵を裏側に向けて先生が子どもに向き合い、質問に答えながら絵に描かれているものを当てさせるというものだ。

 この研修は、先輩教員が先生役、新人教員が子ども役となり、園長がアドバイザーとして行われたが、このカリキュラムは年長児の子どもにとっても先生にとっても重要な意味を持つ。今回は、この通年カリキュラムである「言葉の指導」に込められた教育意図を紹介していこう。

「自由に生きる」ためには
語彙が豊かであることが大切

 多くの語彙を獲得することが教育上プラスであることは説明の必要もないだろう。言葉を覚えることによって、世の中の現象や物体を認識し、その意味合いや構造を理解することができるようになる。

 しかし、風の谷幼稚園では「ただ単に語彙を増やすだけでは教育効果は限定的なものにしかならない」ということを認識し、「言葉の指導」には別の視点を導入している。それは何か?

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「風の谷幼稚園 3歳から心を育てる」

著者

野村 滋(のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

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