地域再生のキーワード

2017年6月10日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

 広島県大竹市玖波(くば)地区。カキの養殖が盛んな瀬戸内海沿いの人口4500人ほどの小じんまりした町である。そんな町の南側にある古ぼけた公民館に昨年、突如としてスポットライトが当たった。

 2015年春のこと、文部科学省が毎年行っている優良公民館表彰で、「日本一」に選ばれたのだ。さらに秋には、広島県が開いた地方創生のチャレンジ・フォーラムで、「まち部門」の優秀事例として表彰された。

人が集まる仕組み

 地域が元気になるその中心に、公民館がある─。それ以来、全国各地から大竹市立玖波公民館への視察や取材が相次いでいる。公民館といえば、卓球やバドミントンなどの軽スポーツができたり、図書室があったり、地域の活動で会議室を借りられたりと、「場所提供」で終わっているところも少なくない。ところが、玖波では、公民館に住民が集まって来る「仕掛け」が出来上がっているのだ。

 実は、その仕掛けを作り上げた人物がいる。河内(こうち)ひとみさん。公民館のたったひとりの職員である。10年ほど前から働き始めたが、5年ほど前に「学びのカフェ」という講座を月に1回のペースで始めた。

「地域ジン」の皆さん

「ダサい、暗い、野暮ったい公民館を、明るく、オシャレな空間にイメージチェンジしようと思ったんです」と河内さんは笑う。講座の合間にもカフェタイムを設けるなどムードを一変させた。「まずは住民に集まってもらうために、楽しいものを企画した」。

公民館の裏手はすぐ港

 さらに「生きた講座」にするために河内さんは工夫をこらした。地元の有名なヨットマンの講演を依頼した際には、公民館のすぐ裏手の港に実物のヨットを停泊してもらい、実際に乗船見学してから話を聞いた。

 また、貴婦人のお茶会と銘打って、とっておきのカップを持参してお茶を入れ、本物のメイドさんに給仕をしてもらった。普段とは違う「異次元空間」を演出したのだ。「公民館の講座は最近変わったことをやっている」。徐々に評判になり、人が集まるようになった。

大竹市玖波地区:古くから山陽道(西国街道)の宿場町として栄える。瀬戸内海を挟んで宮島が目の前にあり、カキの養殖が盛んに行われ地元の主要産業になっている

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