見たくない人の権利はある。企業の中で行われれば、それは明確な性的嫌がらせだ。
下着を下ろした「女子トイレ」のマークに批判
ある朝会社に行くと、自分が利用する場所に、明確にあなたに見せる目的で、性的な描写のイラストが置いてある。どう感じるだろうか。あなたが男性でも女性でも、やった相手が異性でも同性でも、相手がたとえ「これは芸術だ」「喜ぶかと思った」と主張していたとしても、あなたが不快と感じれば、これはセクハラだと訴えることができる案件だ。厚労省がまとめた「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」には「環境型セクシュアルハラスメント」の典型的な例として「事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと」が挙げられている。
4月19日に集英社の「少年ジャンプ+α」で掲載されたweb漫画「すすめ!ジャンプへっぽこ探検隊!」の「【3話】ジャンプ編集部の女子トイレのマークを矢吹健太朗先生がデザインしたらこうなった!!」が炎上している。
簡単に内容を紹介すると、ジャンプ編集部のトイレが普通でつまらないと感じた作者が、編集者と「トイレのマークをジャンプ作家さんにデザインしてもらう」ことを検討するところが発端。男子トイレ、女子トイレ両方のマークを制作することにはなぜかならず、女子トイレのマークのみを、「ちょっぴりえっちなラブコメ漫画」家として有名な矢吹健太朗氏が描くことになる。
本来、トイレマークは男子用女子用の対比があってこそ成り立つ「デザイン」なのだが、このあたりからすでに当初の企画が迷走し始めている。作者は漫画内で「矢吹先生以上に女子トイレにふさわしいジャンプ作家はいない!!」と言い切っており、この理由は矢吹氏が性的な描写に優れているからであろうことが推測できる。何か女子トイレに対しての思い入れがあるのかもしれない。
矢吹氏が描いたイラストは4パターン。(1)女性の裸体のシルエット、(2)麦わら帽子をかぶった着衣の少女のシルエット、(3)胸が強調された女性の裸体のシルエット、(4)下着を膝のあたりまで下ろしている姿、太ももからふくらはぎのあたりまで描かれている。作者はイラストが紹介されるたびに、「スゲエー この体のライン!」「ありがとぉおおおございましたぁああああ!!!」「次元が違う!!!!!」など、感動を露わにしている。
結局選ばれたのは「次元が違う」と評価された4枚目の下着を下ろしているイラスト。実際に編集部の女子トイレマークが貼りかえられた写真が「なんという事でしょう!」「見る者を惹きつける魅力的なトイレに!!」という文章と共に紹介される。漫画のオチは、「とにかくこんな素敵なトイレならきっと編集部の女子もよろこんで…」と言う作者に「っていねぇよ編集部の女子!!!」と編集者が答え、「ジャンプ関係者の女子のみなさん! 編集部にお越しの際は是非女子トイレにお立ち寄り下さい!」という呼びかけで終わっている。
あまりにも無邪気で無自覚なセクハラだ。女性が利用する場所に、女性を性的な目線で描いたイラストを掲示することに、何の疑問も持たなかったのだろうか。