シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年5月9日

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湯之上隆 (ゆのがみ・たかし)

微細加工研究所所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を修了後、日立製作所に入社。以後16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センタ、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。現在、半導体産業と電機産業のコンサルタントおよびジャーナリスト。微細加工研究所所長。著書に『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)など。

 中国の武漢にあるXMCは、2020年までに240億ドルを投じて月12インチウエハで月産30万枚の3次元NANDフラッシュメモリの大工場を建設中である。XMCは紫光集団の傘下に入り、2030年までに月産100万枚の規模に工場を拡張する計画を発表した。

 その紫光集団は、東芝メモリの1次入札前に2.4兆円の買収金額を準備したと報じられた。しかし、日本政府が外為法違反を持ち出してきて、中国や台湾に業による東芝メモリの買収を阻止する意向を見せたため、紫光集団は応札を取りやめた。

 紫光集団の趙偉国董事長は、「市場経済を標榜しながら、実際はこれに制限を加えている国家がある」と日本政府を批判し、東芝メモリへの出資は「入札価格を引き上げる道具にされるだけだ。エネルギーを無駄にする価値はない」と切り捨てた。その上で、「中国(の半導体)が世界に追いつくのは時間の問題だ」と自信を見せ、いずれ中国が世界のトップになることを言外に匂わせた(日経新聞4月25日)。

 なぜ中国は、半導体に注力するのか? また、デジタル家電、液晶、太陽電池などは、中国が猛威を振るっている。にもかかわらず、これまで中国の半導体が鳴かず飛ばずだったのはなぜか? そして、低空飛行を続けてきた中国半導体産業は、今後、どのようになると予測されるか?

中国の紫光集団のとんでもない半導体計画

 紫光集団傘下のXMCが3次元NANDに参入し、着々と立ち上げを進めている。しかし、XMCは紫光集団が計画している半導体計画の氷山の一角に過ぎない。米半導体業界誌の吉田順子記者によれば、紫光集団は2020年までに、以下の半導体工場を建設する予定である。

①武漢のXMCに、240億ドルを投じて、月産30万枚の3次元NAND工場を建設する
(この工場は、2030年までに月産100万枚に拡張すると発表している)
②南京に、300億ドルを投じて、月産30万枚のDRAMまたは3次元NAND工場を建設する
③成都に、280億ドルを投じて、月産50万枚のファンドリーを建設する
 (ファンドリーとは、半導体製造専門の工場のことである)

 これらを合計すると、紫光集団は、2020年までに、820億ドルを投じて、月産110万枚の半導体工場を建設するということになる。

 これがどれほどとんでもない計画であるかは、台湾TSMCと比較すれば一目瞭然である。1987年にモリス・チャンCEOが設立したTSMCは、その後30年で世界最大最強のファンドリーに成長した。毎年1兆円規模の投資を行い、約40%の営業利益率を叩きだすTSMCは、世界のファンドリービジネスの60%を独占し、近年は微細加工技術でもインテルを凌ぐ勢いである。

 そのTSMCは、43,591人(14年末時点)の社員がおり、12インチウエハ換算で月産75万枚の生産キャパシティがあり、半導体売上高は1位インテル、2位サムスン電子に次ぐ3位が定位置となっている。

 ここで、紫光集団が成都に建設する予定のファンドリーに目を向けてみよう。2020年までに月産50万枚規模のキャパを建設すると言うことであるが、これは、TSMCが30年かけて築き上げてきたキャパ75万枚の2/3に相当する。それを紫光集団は僅か数年で構築すると言っているのである。

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