世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月15日

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 サマーズ元米国財務長官は、4月10日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、トランプ政権の対中貿易政策は大して重要ではなく、中国とは長期的視野で経済対話を行うべきである、と述べています。要旨は、以下の通りです。

(iStock)

 ドナルド・トランプと習近平による最初の首脳会談が終わった。この会談は米中間の経済関係がどこに向かい、米国がこの関係をどこへと導きたいのかという疑問を残した。特定の問題の解決と同様に重要なのは、直面すべき真の課題は何かである。それは今後の経済外交の焦点となるものである。私(サマーズ)は先日、中国での主要な経済フォーラムに参加し、政府高官数名と会ったが、多くのアメリカ人が関心を寄せている問題は、根拠のないものであるか、さして重要でないものであり、他方、中国による最も重要な経済的挑戦には、それに値するよりもずっと低い関心しか示されていないことを確信した。

 米国は中国が為替操作をしていると言っているが、それは、地政学的な領域における「一つの中国」政策を変更する議論と同様、よく見ても非建設的であり、おそらくは危険である。2005年以降の10年間については、中国が為替を非合理的な方法で操作してきたといえるだろうが、今日の中国が競争力を高めるために人民元を下落させる操作をしているとは言えない。

 さらに、米国経済の将来は、北京よりもワシントンの政策によって形作られる。中国の貿易が、米国内に混乱を引き起こしたとすれば、それは、中国の著しい成長と生産能力の増進の結果であり、不公正な通商政策の結果ではない。

 もし通貨問題に根拠が無く、通商外交が米国経済により良い効果をもたらしそうにないとすれば、米国の対中経済政策はどこに焦点を充てるべきか。

 1月のダボス会議における習氏のスピーチは、リンカーンを引用し、米国が内向きになりつつある時代におけるグローバルな経済システムのための中国のビジョンを展開したが、これは中国の組織的な戦略の一部である。

 無論、中国とヨーロッパを繋ぐインフラ投資と対外援助を標榜した習氏の「一帯一路」構想が存在する。AIIBでは、世界中で投資をすると言っている。すでに南米やアフリカにおける中国の投資は米国や世銀、そして地域開発銀行よりも多い。そして中国は、クリーンエネルギー技術の輸出先導者となるだろう。

 この投資は、いずれ原材料へのアクセスを保証し、中国企業に規模の利益を与え、中国が友好国を獲得することに寄与する。米国はAIIB不参加を選択し、ブレトンウッズ体制の財政基盤強化の足を引っ張り、気候変動における地球規模での協力を傷つけ、そして対外援助を減少させることを選択した。そうすることで、米国は名声と影響を得るための国際競争における卓越した地位を急速に失いつつある。

 グローバルな経済協力の目的と、米中それぞれの役割は、真の戦略的経済対話のテーマである。そのような対話が早期に始まることは非常に重要であるが、そのためには特定の短期的な事業利益ではなく、歴史家たちが1世紀後に記憶することになるであろうことに、より焦点を当てるべきである。

出 典:Lawrence H. Summers ‘The US must work on its economic relationship with China’(Financial Times, April 10, 2017)
https://www.ft.com/content/abbeb10a-1b85-11e7-a266-12672483791a

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