世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月15日

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 米国の対中大幅貿易赤字を背景に、トランプが選挙中から中国に対する厳しい批判を繰り返していたので、一部に米中貿易戦争を懸念する声もありましたが、先般の米中首脳会談では、「100日計画」が合意され、100日間で米中の懸案事項を検討することとなり、貿易戦争は回避された形になりました。

 しかし、サマーズは、トランプの批判する中国の為替操作については、今や中国は元を支えるために介入しているのであり、トランプの批判は的外れであると言っています。また、輸出補助金などの中国の非関税障壁については、その影響は大したものではないと述べています。サマーズの言う通りでしょう。

「100日計画」でどの程度の合意が達成されるか

 「100日計画」でどの程度の合意が達成されるか分かりませんが、かなりの成果が上がったとしても、米国の対中貿易赤字の解消からは程遠いものでしょう。

 そもそも、米国の対中貿易赤字の原因が、中国政府の不公正な経済政策によるものであるとの考えが間違っています。

 サマーズは、米国の対中経済政策でより重要なのは、中国といかにグローバルに協力するかであると述べています。その背景には、トランプ政権が米国の世界経済における指導的役割にあまり関心がない間に、中国がAIIBの拡充や、気候変動の重要性の指摘などで、グローバルな経済システムでの地位を着々と強化しているという事情があります。それを最も象徴するのは、1月のダボス会議における習近平の演説でしょう。習近平は「世界に開かれた自由貿易圏のネットワークを作る」と述べ、自由貿易の発展の堅持と保護貿易への明確な反対を強調しました。従来米国が言っていたようなことを述べたのです。

 もちろん中国が米国に代わって世界経済のグローバル化の旗振り役を担うと考えるのは尚早です。中国経済自体、金融面をはじめ未だ自由化されていない部分がかなりあります。

 ただ、一方の米国では、トランプ政権が国際秩序やグローバルな経済システムにあまり関心が無く、米国の指導的役割には言及していません。トランプ政権には世界経済システムについての戦略がないようです。

 サマーズは中国といかにグローバルで協力するかが重要であると言っていますが、現在のトランプ政権にその用意があるとは思えません。

 しかし、グローバルな経済システムにおける米国の指導力は、そのシステムの維持、発展のため不可欠です。トランプは「米国を再び偉大にする」と言っていますが、グローバルな経済システムの指導者たらずして偉大ではありえないことを自覚すべきです。また、日本や欧州があらゆる機会をとらえて、トランプ政権に対し、そのような指導的役割を果たすよう働きかけるべきです。

  
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