世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年5月17日

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 米国とイランがイラクで影響力を獲得しようとしているが、トランプ政権の対イラク政策はまだ不明確であると、4月12日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は次の通りです。米国は、イラクで兵士5800人と複数の軍事基地を擁している。一方、イランは、公式には95人の軍事顧問を置いているだけだが、イランの勢力は米国の5倍はあると、アバディ首相顧問は言う。安全保障の専門家も、「イランの影響力は、イラクのあらゆる機関に浸透している」と述べる。

(iStock)

 イランの関与は数十年前からで、アヤトラたちは1979年のイスラム革命後、サダム・フセインに追放されたシーア派亡命者を採用した。彼らはイラクとの戦いに動員され、2003年にサダムが米国に倒されると、イラクに戻ってバース党の非合法化で生じた空白を埋めた。2011年の米軍のイラク撤退とイスラム国(IS)の侵略がさらなる好機を提供した。ISが南に勢力を伸ばすと、シーア派民兵組織はhashad(大衆動員)を宣言し、何万もの志願者を徴集した。

 これら民兵組織は、イラン革命防衛隊の助けを借りてバグダッド陥落を防ぐと、国を「守る」ため、残された国家機構の大半を事実上掌握した。既にバグダッドの大半は約100の民兵組織の間で山分けされている。ほとんどのイラク・シーア派は自国のシスタニ師に忠誠を誓うが、民兵組織の指導者の多くはイランの最高指導者ハメネイ師に従うと言う。一部の民兵組織は議会に代表がおり、2018年の選挙に向けて親イラン連合を結成する可能性もある。

 もっとも、イラン支持の現実的利益は、一定のイラク、そしてアラブ・ナショナリズムによって抑えられてもいる。米軍の存在もイランへの依存の抑制に役立っている。2014年、ISとの戦いを支援すべく米軍がイラクに戻ると、ほとんどの民兵組織は歓迎した。

 また、今のところhashadは、モスル奪還は米軍と米国人顧問に訓練された特殊部隊に任せ、後方に控えるようにとの命令に従っている。hashadは、シーア派中核地域を越えて北部に進出する中、排他性を薄め、スンニ派、キリスト教徒、ヤジディ教徒も採用するようになっている。また、米国の説得で、シーア派復活熱を弱め、よりアラブ的外交政策を採るようになったアバディを支持している。2月にはサウジ外相が27年ぶりにバグダッドを訪問し、イラクの代表団もサウジとの貿易復活の交渉のためにリヤドを訪れた。

 しかし、こうした関係改善がモスルを巡る戦術的協力を越えてどこまで続くのか、関係者の誰もが危ぶんでいる。米国は大規模な軍事基地を4つ再建し、イラクを去る気配はない。一方、3月に訪米から戻ったアバディは、10万強のhashadの半分を廃し、残りをイラク軍の直接指令下に置く計画を発表した。憂慮したイランは、スレイマニ将軍の上級顧問でもある新大使をバグダッドに送り込んだ。イランのプロバガンダで、一部の民兵組織は再び反米主義を標榜し始めている。あるイラク軍幹部は、米国の占領を容認しているのは政府であって、人民ではないと言い、米国ではなく、イランをイラク安定の最終的保証者と見ている。シリアと同様、イラクに対しても、トランプ大統領の明確な政策が必要である。

出 典:Economist ‘America and Iran are jostling for influence over Iraq’ (April 12, 2017)
https://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21720612-no-one-knows-what-donald-trump-wants-america-and-iran-are-jostling

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