したたか者の流儀

2017年5月18日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 もし、搭乗中の飛行機で、キャプテンから昇降舵も方向舵も動かなくなったとのアナウンスがあったらどうだろうか。続いて、機長も副操縦士も飛行学校一番で卒業しているので任せてくれと。仮に機長が、野蛮なら大きな金づちを手に命綱をつけて、凍結した部位を叩くかもしれない。また、機長が、無謀ならがガスバーナーで溶かすかもしれない。幸い知性も教養もあるキャプテンと副操縦士でよかったというのが、今回のフランス大統領選挙ということになる。ガスバーナーや金づち機長は、例えればルぺンやメランションということになる。幸い最も穏当な結果となった。加えて心配していた首相候補も、最適任者に決まったようだ。

15日にベルリンで行われた独仏首脳会談

 しかし、フランスの現状は何も変われないと気が付くべきであろう。日本の報道を見ると、最後までルペンの可能性を期待していたとしか考えられないものが多い。トランプ、BREXITともに外したことと、トランプのおかげで既成のメディアが潤ったこともあり、「夢よもう一度」でルペンに期待したのかもしれない。知っていてとぼけたと信じたい。

 本邦フランス政治研究の第一人者と話した。先生がインタビューでルぺンの可能性はないというと、落胆の様子が隠せない記者が多かったそうだ。万が一という場合はどうですかと食い下がる記者までいたそうだ。メディアは「ことあれかし」ということであろう。

 選挙も無事終わり、ルペンが消えたとたん、極めて重要なイベントである首相任命をNHKの7時のニュースでさえ黙殺していた。今後、欧州がどうなるかを占う試金石でもあり、世界がどちらに向かうかの風向計でもある重要なフランス政治という認識が少ないのではないだろうか。

 機長と副操縦士が順当であったとしても、「フランス経済問題」と「国民議会選挙」がまっているのだ。少なくとも国会は所詮577人のことで、大統領の大権をもってすればどうにかなるかもしれないが、経済はどうにもならない。昇降舵、方向舵ともに凍結している状態といえる。成長率約1%、失業率10%と厳しい状態だ。

 そもそも、景気を刺激するのは簡単で、金利を下げ、国が金を使い、同時に税金を下げれば出来上がりとなる。しかし、既にEUの約束である対GDP比で財政赤字3%と公的債務60%を超えているので、そのすべての手が打てない状態だろう。普通その場合、通貨が下落し輸出が拡大して危機を脱するのだが、通貨はすでに国の手を離れてユーロになっているので、通貨での調整はできない。

 フランス経済は、エンジンも帆もない状態で浮遊するしか手立てがないことになる。マクロンと首相のフィリップという2人の知性でどこかに軟着陸するか、ドイツという引き船に媚びをうって、引いてもらうかのどちらかの選択となってしまう。

 そもそもナチズムを生み出してしまったのはワイマール憲法が理想主義的であったからだと考えうるが、同様に財政の統合なしに通貨だけ統合しても、無理な話であると思う。

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