ビジネスにも効く!アニメ監督のマネジメント術

2017年7月1日

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藤津亮太 (ふじつ・りょうた)

アニメ評論家

アニメ評論家。'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。

国内興行収入25億円を超える大ヒットとなった『劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』の伊藤智彦監督は、作品をつくる際に必ず“3本の柱”を立てると言います。本当に大事なことだけをできるだけシンプルな言葉で伝えるそのワケとは……?

伊藤智彦(いとう・ともひこ)氏:アニメーション監督。マッドハウスに入社し演出に。荒木哲郎監督の『DEATH NOTE』で監督助手、細田守監督の『時をかける少女』『サマーウォーズ』で助監督を務め、『世紀末オカルト学院』で監督デビューを果たした。最新作『劇場版 ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール-』は国内興行収入25億円を超える大ヒットとなり、海外でも異例のヒットを記録している。そのほかの主な作品に『銀の匙 Silver Spoon(第1期)』『僕だけがいない街』などがある。
★ この連載について ★
1本のアニメ作品に関わるスタッフは100人以上。アニメーション監督は、そんな大所帯を率いて作品の完成を目指すプロジェクトリーダーだ。作品をちゃんとまとまった形にするために、監督は打合せで狙いを説明し、成果物をチェックしてOKかNGかをジャッジする。アニメはそんな「打合せ」と「チェック」の積み重ねで出来上がっている。アニメーション監督はそこでどのようなマネジメントを行い、作品をあるべき形へと導いているのか。さまざまなアニメーション監督の作品づくりを支えるマネジメント術から、ビジネスパーソンにも役立つポイントを伝えていく。

 

「絶対にこうでなくてはいけない」と言えるものはそれほど多くない


――伊藤監督は2010年に『世紀末オカルト学院』で監督デビューされていますが、自分なりの“監督のやり方”が確立したのはいつごろですか?

伊藤:『世紀末オカルト学院』の時には、すでにそういうものはあったと思います。俺が最初に入ったマッドハウスという会社では、自分で絵を直しちゃう監督さんが多かったのですが、それをやると監督の本来の仕事が止まってしまう。自分は絵を描けるわけではないので、監督になった時は、カット袋(アニメーターが原画・動画を収めた袋)をできるだけ手元に溜めないようにしようと思っていました。監督というのは「人にやってもらう仕事」なので、その意識は最初から明確でしたね。


――チェックをする時の基準は?

伊藤:基準は「演出意図と乖離していないかどうか」です。そこさえ満たしていれば、上がってきたものが想定と違っていても、「これはこれであり」と思って通します。アニメ業界では腕がよい人は同時に個性も強いわけで、そういう人にお願いをすると、自分の想定外のものが上がってくることもあるわけです。でも、その人に頼んだ以上、受け入れるしかない。それでも心配な時は、最初に「これとこれはNG」と告げるようにしています。


――基本は受け入れるんですね。

 

伊藤:もちろんダメなものはダメなのですが、必要以上にダメと言わないようにするのは大事なことです。アニメの第1話は大体300~400カットで出来てるんですが、「絶対にこうでなくてはいけない」というカットはそれほど多くないんです。大半は演出意図が伝わるものであればなんとかなる。

 そもそも上がってきたものを前に、あれこれ考えることが本来の演出の仕事だろうか、という気持ちがあります。
 

――それはどういうことでしょうか?

 演出の仕事というのは、ちゃんとプランニングを持って打ち合わせに臨み、各セクションから演出プランを外したものが上がってこないようにすることじゃないかと思うんです。
 

――演出プランをスタッフにうまく伝えることが第一の仕事である、ということですね。

伊藤:そうです。「こんな作品を作りたい」というイメージや想いはプロデューサーや脚本家も持っているので、そういった想いを現場に伝えるのが監督の役割です。プリプロダクションの段階での思いを100%とすると、それをいかに漏らさず現場のスタッフに伝えられるか、そこが勝負です。

 監督には情報伝達スキルが必要なんです。そこは言葉を尽くす監督もいれば、絵を描ける監督なら自分で描いて伝えることもありますね。
 

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