ビジネスにも効く!アニメ監督のマネジメント術

2017年8月11日

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藤津亮太 (ふじつ・りょうた)

アニメ評論家

アニメ評論家。'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。

アニメ『正解するカド』で特徴的な映像を創り出し、多くのファンを魅了した村田和也監督。瞬時にジャッジを下さなければいけない理由と、その秘訣を語っていただきました。

村田和也(むらた・かずや)氏:アニメーション監督。松下電工(現・パナソニック)に就職した後、退社し、スタジオジブリの演出研修制度の第1期生となる。『おもひでぽろぽろ』『海がきこえる』などに参加した後、スタジオジブリを離れる。制作会社オー・エル・エムの設立に参加した後、フリーとなり『交響詩篇エウレカセブン』(演出)、『コードギアス 反逆のルルーシュ』(副監督)などに参加。映画『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』で劇場初監督を務める。2018年春より、村田和也監督×ボンズのSFアニメ『A.I.C.O. -Incarnation-』がNetflixで独占配信される。
★ この連載について ★
1本のアニメ作品に関わるスタッフは100人以上。アニメーション監督は、そんな大所帯を率いて作品の完成を目指すプロジェクトリーダーだ。作品をちゃんとまとまった形にするために、監督は打合せで狙いを説明し、成果物をチェックしてOKかNGかをジャッジする。アニメはそんな「打合せ」と「チェック」の積み重ねで出来上がっている。アニメーション監督はそこでどのようなマネジメントを行い、作品をあるべき形へと導いているのか。さまざまなアニメーション監督の作品づくりを支えるマネジメント術から、ビジネスパーソンにも役立つポイントを伝えていく。

 

ジャッジに時間をかけてはいけない理由

――村田さんの作品を取材すると「成果物に対するジャッジが早い」という声をスタッフの方からよく耳にします。それは意識的に心掛けているのでしょうか? 

村田:はい。たとえば作品に登場するキャラクターのラフ画が上がってきて、それを見た瞬間に違和感があれば、その違和感をもとになるべく早く返事をします。

 なぜなら、見た瞬間の感想がいちばん鮮度が高いからです。お客さんは常に初見で作品を判断するわけですから、自分が見た瞬間に違和感があれば、お客さんも「それってなんか変じゃない?」と、同じように無意識的にでも何か感じるはずなんです。

 ところが時間を置くと見慣れてしまい、これはこれでよいかと思ってしまったりもするわけです。そうすると、お客さんの感覚から離れてしまう。それが、作品をつくるうえで一番怖いことです。
 

――返事に時間がかかることはないのでしょうか。

 

村田:それは、こちらのオーダーとぜんぜん違うものがあがってきた時ですね。

 ちゃんと説明したにもかかわらず、まったく違うものが上がってきた場合は、その人なりの考えがあるのかもしれないし、自分の伝え方が間違っていたのかもしれない。或いはそのアイデアに乗り換えたほうがおもしろくなるかもしれない、と考えることもあります。

 作品の根本に関わる部分でそういう迷いが生じた場合は、さすがに時間をかけて考えざるを得ません。逆に言えば、根本がしっかり決まっていることが、ディティールに対するジャッジを早くすることにも繋がるわけです。


――村田さんが、そういう自分なりの監督スタイルを確立したのはいつごろでしょうか?

村田:じつは、自分なりの監督スタイルってないと思ってるんです。自分の監督作は短い作品を除くと、制作中のものも含めて4タイトルありますが、すべて成り立ちや状況が違うんです。なので、企画の事情ごとに監督の身の置き方も変えざるを得なくて。自分としてはどこかでスタイルを確立したという意識はあまりないんです。
 

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