2024年4月24日(水)

佐藤忠男の映画人国記

2010年8月2日

 監督では巨匠内田吐夢(1898〜1970年)が岡山市出身だ。中学時代に学校で問題を起こして横浜のピアノ工場に追放され、そこで日本で最初の芸術映画を作ろうとしていたアメリカ帰りのトーマス栗原監督と出会い、師事し、師匠のトーマスの名を貰って吐夢(トム)と名乗った。骨太な社会派映画で独自 の路を開き、「飢餓海峡」(1965年)や「宮本武蔵」5部作のような豪快な作品では他の追随を許さなかった。前述の千原しのぶの代表作「暴れん坊街道」(1957年)も内田作品である。

 森谷司郎監督(1931〜84年)は、生まれは東京だが高校は岡山の名門の岡山朝日高校である。代表作は「八甲田山」(1977年)で、厳冬の冬山に雪中行進の部隊を演じる俳優さんたちをえんえんと待機させての撮影は伝説となった。

 アニメーションの監督の高畑勲も生まれは三重県だが高校は同じく岡山朝日高校だった。代表作は「火垂るの墓」(1988年)。神戸の大空襲で孤児となって死んでいった兄妹の物語をアニメには類のない美しい絵物語のようにして作った。最近は理論家としての著述が多い。

 現役では「リング」(1998年)で日本のホラー映画ブームを生んだ中田秀夫も岡山県出身である。その才能を買われてハリウッドに招かれて自作のリメークの「リング2」でヒットをとばしている。(次回は山梨県)

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