したたか者の流儀

2017年6月17日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 自分の会話が盗聴されていると確信したことがその後何度かある。始めての経験は、1995年クウェートのホテルでのことだ。CNNを見ていると、カタールでクーデターがあったといっている。大至急バハレーンの本社に電話した。数人でホテルからスピーカーフォンで話していた。カタールに出張者がいないかどうか確かめたあと、クーデターという言葉を三回使った段階で電話は切れてしまった。やはり、独裁色の強い中近東ではクーデターはもっとも心配していることなのだろう。建国以来世代の交代は、二度ともクーデターでなされた国がカタールだ。

カタールの首都ドーハ(iStock)

 1995年に起きたカタールのクーデターは、1971年国家成立の翌年、自分の父が外遊中にクーデターを起こして成功したのがハリーファで、1995年に息子ハマドに今度は自分がクーデターで放逐されたのだ。

 このカタールが、2022年末のサッカーワールドカップの開催国となっている。今回、2014年に続いて、近隣の国である、サウジアラビア、バハレーン、UAE(アラブ首長国連邦の略称、アブダビ、ドバイなどが連邦のメンバー)から国交を断絶されたので激震が走っている。

 この4カ国にクウェートとオマーンを加えたアラビア湾岸の6カ国は、対岸でシーア派の領袖イランを意識してGCC(Gulf Cooperation Council)、すなわち「湾岸協力理事会」を形成しているが、そこの仲間で国交断絶とは穏やかではない。

 しかし、この地区ではサウジアラビアが長兄とすれば、バハレーンは長兄に物心共に頼っている末っ子であるが、カタールは、無血とはいえ二回の世代の交代がクーデターでなされたように気の荒い次男坊というこことだ。カタールは陸上でサウジアラビアと国境を接している、過去に銃撃戦もあったようだ。また、バハレーンとは、島の領有権をめぐっての争いが続いていたこともある。

 その一方で、イスラエルに一時とはいえ大使館を開かせるなど隣国の神経を逆なですることが続いたのであろう。今回の国交断絶の直前にサウジアラビアを訪問したトランプ大統領はサウジアラビアに対してイランを意識した12兆円規模の武器輸出をOKしており、平和裏に国際社会への復帰に意欲を見せるイランに冷や水をかけているとしか思えない。

 しからば、秩序を乱すカタールも懲らしめるチャンスとみたのか、カタールも何らかの工作をしたのか、ロシアの陰謀に意図的に踊った国があるのか、結論はまだでていない。

 カタールと中部電力とのLNG長期契約は有名だが、光ファイバーや半導体製造の陰の主役、ヘリウムの一大供給国でもあるため、日本の産業界への影響がでてくるだろう。

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