したたか者の流儀

2017年6月4日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 かなり昔イラン人から、あなたは「たこ焼きが好きですか?」と聞かれたことがある。唐突だったのだが、本当に大好きなので正直に答えた。「あれはイランの物なのです」。よく意味がわからなかったが、どうもたこ焼きソースはイラン製だということらしい。濃厚たこ焼き・お好み焼き用のソースはナツメヤシをかなり含んでいる。自然に熟れたナツメヤシすなわちデーツは大粒の甘納豆のような甘みの宝庫でもある。

雪山の美しいテヘラン市内(iStock)

 フランス大統領選は日本でもそこそこ話題となった。ルペンが当選するのではないかといって、危機感が生まれユーロが売られた。この動きをみて、もしやというありもしない可能性を語る向きがあったが落ち着いた。韓国の大統領選が予想通り決まったころ、本当は世界の今後を占う大統領選挙がもう一つあった。イランの大統領選挙だ。

 1981年と思うが、イスラエル空軍機が15機でサウジアラビアの国境地帯を低空で飛びイラクに侵入、原子力施設を破壊し何もなかったかのように帰還したという出来事があった。イランの核開発に対しても、イスラエルが同様の作戦をするのではないかという話があった。イスラム圏の超大国で、数千年の歴史のある国ペルシャはイランと名前を変え、核武装をめざしながら世界中と対峙している。今のところ、つむじ曲がりの国としてかたづけられてしまうが、それでよいのであろうか。

 古代ギリシャと戦い、ローマ帝国と覇権を争ったペルシャが、長い眠りから覚醒したら世界の中心の一つとなる。1400年も前の飛鳥の時代には、日本にもペルシャ人が来てたようだ。いまだに、ホメイニ革命以降、宗教家が国家の頂点に立っている。現在のハメネイ師は再選されたロウハニ大統領の対立候補を推していたそうだ。

 しかし、よく考えると宗教が絶対であれば、ロウハニ大統領は再選されない。国民の声なき声として、世界中から制裁に疲れているとみた。イラン制裁の原理である国際政治では敵の敵は味方となることが多い。

 しかし、中近東は大対立、中対立、小対立となっているので、直ぐには解きほぐせない。大対立は、イスラエル対アラブ諸国+イラン、サウジアラビア対イラン、シーア対スンニという図式となる。この図式をよく見ると、対立の主役はすべてイランと言うことになる。

 有名なホメイニ革命やパーレビ崩壊、米国大使館占拠、救出作戦失敗、イライラ戦争と米国の面子が失われた40年ということになる。

 その昔のパーレビ時代テヘランは中近東のパリとされ、石油景気で繁栄を極め楽天地であった。大手商社や今はなき東京銀行が拠点を置き、各新聞社は特派員を置いていた。何かの弾みがあれば、数千年の間に何度かあったような世界の大国の一角に再浮上する可能性を秘めているのだ。実を言うと、イラン以外の中近東の国は些か人工的な不自然さを持っているがイランは違う。

 そんなイランは、長くて暗い時代のあとやっと2015年に核合意に達し、国際社会に再登場寸前のところで今回現職のロウハニ大統領の信任を問うたのだ。正式復帰への一里塚となる大統領選ともいえる。

 反米強硬派で核合意が揺らぐ可能性のある対立候補ライシ前検事総長が落選したのはマクロンとルペンの構図に似ている。結果の得票も57%対38%となっている。

 再選されたロウハニ師は、国際社会への復帰の切符を持っている穏健派である。とはいえ宗教界や国内に対するポーズも必要であろう、ミサイル開発の継続発言など、本心なのかどうか鋭く見極める必要がある。

 隣のイラクがシーア派主導となったために起きたともいえるISに対する追討はシーア派の盟主として血をながしている。この戦いでは、大対立の同士の偶然の連携が期待されるが、いやなヤツと手はつなぎたくないと愚図る処も出てくるのだろう。

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