<大好評5刷>(2015年7月)
アメリカについては、十分すぎるほどの情報が日本に入ってきます。政治や通商の動向、軍事政策、ポップカルチャー――。洪水のような情報量は、依然としてアメリカが、日本にとって重要な隣国であることを裏付けています。実際に、われわれの生活のあらゆるところでアメリカ発の考え方が蔓延しているといって過言ではありません。
しかし、メディアを通してみるアメリカの姿には、その実像との間に大きな乖離があります。一見超大国と見えるアメリカも、多くの不安を抱えているのです。
たとえば近年、アメリカではゲーティッド・コミュニティと呼ばれる街が多数形成されるようになりました。ゲーティッド・コミュニティとは、同じような階層の人々が集まって郊外に街をつくり、セキュリティのためにその周囲をフェンスとゲートで覆った街のことです。いたるところで頻発する事件が、国民の不安をあおり、このような街を形成するに至りました。
また、軍事強国であるアメリカは、九・一一のテロ以降、着々と対外的軍事戦略を強めています世界各地に米軍基地を置き、在外米軍部隊の配備を進めています。また、公には認めてはいないものの、宇宙において情報ネットワークを構築し、偵察の準備を進めていると言われています。
一方で、アメリカ国民は意外なほど熱心なキリスト教信者です。神の存在を疑わず、毎週のミサは欠かさない――そのような国民が3割を占めているのです。アメリカは、宗教が社会システムの一部として機能し、政治動向に大きく作用している社会と言えるでしょう。
こうして見ただけでも、われわれの知る情報とは大きく異なるアメリカが実在することがわかると思います。本書では、政治、軍事、宗教、医療など、さまざまな事象の日米差を比較することで、日本から見れば特異にも映るアメリカの有りようを考えます。