海野素央の Love Trumps Hate

2017年7月11日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプの100のウソ」です。米ニューヨーク・タイムズ紙(2017年6月25日付)は、ドナルド・トランプ米大統領が同年1月20日の大統領就任式から6月21日までの153日間に、ツイッターに投稿した内容を調査しました。その結果、100個にものぼる「ウソ」を発見したのです。本稿では、同紙が掲載した100個のウソを分類した上で、トランプ大統領の狙いと今後の課題について考えます。

(mars58/iStock)

手柄のウソ

 トランプ大統領の100個のウソにはある傾向が存在します。同大統領のウソは、主として手柄(19回)、オバマ前大統領(12回)、メディア(10回)及び、数字(7回)に4分類できます(図表)。まず、手柄からみていきましょう。

 4月28日、トランプ大統領はF-35戦闘機について「私は交渉に携わることで7億2500万ドル以上を削減した」とツイッターに投稿しました。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、実際は同大統領就任前に、ほとんどの削減が決まっていたのです。トランプ政権前から見積もられていたのにもかかわらず、翌日29日にもF-35戦闘機に関して「私が交渉をして値下げをした」と書き込んでいます。同大統領は「自分がやった」というメッセージを発信して、手柄を自分のものにするのです。

オバマを巡るウソ

 次に、オバマ前大統領を巡るウソについて説明します。1月25日、トランプ大統領はオバマ大統領(当時)が地元のシカゴで演説を行った時、2人が銃撃でなくなったとツイッターに投稿しています。その日、シカゴでは銃撃事件はありませんでした。

 トランプ大統領のオバマ前大統領に関するウソは続きます。3月4日、同大統領は「ひどい!選挙の勝利直前にオバマがトランプタワーを『盗聴』していた」とツイッターに書き込みました。しかし、盗聴の証拠はありません。

 2016年米大統領選挙で、トランプ陣営とロシア政府が共謀していたのではないかという「ロシアゲート疑惑」から米国民の関心をそらす意図で、トランプ大統領は「オバマのトランプタワー盗聴」というウソをついたのでしょう。筆者がワシントンで下院外交委員会に所属するジェリー・コノリー議員(バージニア州・第11選挙区)にヒアリング調査を行った時、同議員もそのようにみていました。このウソは不発に終わりました。

 トランプ大統領が、ツイッターでオバマ前大統領の医療保険制度改革法(通称オバマケア)を標的にしてウソを繰り返している点も看過できません。例えば、3月13日同大統領はオバマケアが「ごく少数しか対象になっていない」と投稿しました。事実は異なります。オバマケアの下で、約2000万人が保険に加入できました。

 米議会予算局の試算では、オバマケアに対する上院共和党の代替法案では、それが施行されますと10年間で約2200万人が無保険者になります。勿論、トランプ大統領はこれに関して自身のツイッターに投稿していません。

 トランプ大統領はオバマ前大統領がアフリカで生まれたので、大統領になる資格がないと繰り返し主張してきました。オバマ氏が出生証明書を見せた後は、資格に関する批判を控えています。トランプ氏にはオバマ氏に対する執着心があることが、同氏を巡るウソの投稿からはっきり読み取れます。

メディアのウソ

 さらに、メディアに関するウソも取り挙げてみましょう。トランプ大統領は、殊に米CNNテレビ及びニューヨーク・タイムズ紙を標的にしています。相撲で喩えれば、2社をフェイク(偽)ニュースの東西の横綱に置いています。

 2月4日、トランプ大統領はツイッターに「私が当選後、ニューヨーク・タイムズはフェイクニュースで謝罪に追い込まれ負けたのだ」と投稿しています。この書き込みに関してニューヨーク・タイムズ紙は「決して謝罪していない」と反論しています。2日後、同大統領は同紙について再度「読者に私の当選後、謝罪を迫られた」と書き込んでいます。これに対しても、同紙は事実ではないとして否定しています。

 「潜入!トランプタワー、信者たちの正体」で紹介しましたが、大統領就任式の前にニューヨーク市にあるトランプタワーで熱狂的なトランプ信者を対象にヒアリング調査を実施しました。その際、白人男性の信者の一人が「彼(トランプ)は決してウソをつきません」と断言していました。驚いたことに、この男性には「トランプ=真実、メディア=フェイク」という公式が成立していたのです。

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