韓国の「読み方」

2017年7月24日

»著者プロフィール
著者
閉じる

澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

 日本の言論NPOと韓国の民間シンクタンク・東アジア研究院が毎年行っている日韓共同世論調査の結果が7月21日に発表された。新聞やテレビでは慰安婦問題に関する日韓合意に関する設問に焦点を当てたニュースが多かった。

 ただ率直に言えば、慰安婦問題については「そんなものだろう」と納得する程度の結果でしかなかった。言論NPOに依頼されてネットの解説動画に出演した私は事前にデータを見たのだが、関心をひかれたのはむしろ、北朝鮮の核問題に関する質問への回答だった。

(iStock/Harvepino)

際立つ「核問題解決へのあきらめ」

 北朝鮮関連の調査結果を詳しく見ていこう。

 まずは「北朝鮮の核兵器開発問題は解決するのか」という質問である。日本側では「2年後には」「5年後には」「10年後には」という期限を分けた「解決すると思う」という答が合計で7.4%だった。韓国側は合計28.7%で、内訳を見ると「2年後」1.3%、「5年後」7.7%、「10年後」19.7%だ。日韓双方で圧倒的に多かったのが「解決は難しいと思う」という悲観的な見方で、日本68.9%、韓国71.3%に上った。

 専門家の間では、北朝鮮に核開発を断念させるのは至難の業だという見方が常識になっている。北朝鮮の金正恩委員長は核開発の理由として「リビアの教訓」を挙げる。米英との交渉で核放棄に応じた8年後、欧米の後押しを受けた反政府勢力に政権を打倒され、殺害されたカダフィ大佐のようになるわけにはいかない、という主張だ。

 米国の情報機関を統括するクラッパー国家情報長官(当時)はオバマ政権末期の昨年10月、「おそらく北朝鮮を非核化しようという試みに見込みはない」と公開の場で述べた。クラッパー氏は、北朝鮮が「(核兵器を)生き残りのチケット」だと考えているから、現実的には核能力に上限を設けることに応じさせる政策への転換が必要だと指摘した。「リビアの教訓」という北朝鮮の理屈をベースに置いた考え方だ。この発言が出た時には「なぜ公の場で言ってしまったのか」と驚かれたが、内容を疑問視する声はほとんどなかった。

 北朝鮮を合法的な「核保有国」と認めることはありえないが、核兵器を持ってしまったことは認めざるをえない。世論調査の結果は、そうした現実認識の広がりを示唆するものだと言えそうだ。

あおられて不安を強めた日本社会

 興味深かったのは、「米国などが軍事行動を起こす可能性」を聞いた調査結果である。米国のトランプ政権が「全ての選択肢」を検討すると広言しながら、空母2隻を日本海に派遣するなどの行動を取ったことで軍事的緊張が高まったことを受けた設問だろう。

 日本では「起こると思う」42.7%、「起こらないと思う」16.2%、「わからない」41%だった。韓国では「起こる」38.6%、「起こらない」43.1%、「わからない」18.3%である。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る