2024年11月26日(火)

塚崎公義の新・日本経済入門

2017年9月5日

 日本の財政が大幅な赤字である事は、誰でも知っているでしょうが、どれくらいの赤字なのでしょうか? 昔から赤字を減らす努力をしているのに、どうして減らないのでしょうか。毎年の財政が赤字だということは、その分の借金が積み重なり、借金の金額も莫大なものとなっていますが、一体どれくらいでしょうか。そんなに借金していて、日本政府は倒産しないのでしょうか。今回は、日本の財政赤字について学びましょう。

(grimgram/iStock)

日本の国の一般会計の歳出は97兆円、うち34兆円は借金で調達

 国(中央政府)と地方公共団体に財政があり、国には一般会計と特別会計がありますが、単に「財政赤字」と呼ぶ場合には、国の一般会計の赤字を指すのが普通ですので、本稿もそうします。

 ちなみに、「国が赤字」というのは「日本国の中央政府の一般会計が赤字だ」ということで、「日本国が赤字だ」ということではありませんので、注意して下さい。日本国と外国との取引は、経常収支統計に示されているように、大幅な黒字です。

 2017年予算の歳出は97兆円です。予算は歳出と歳入が同額ですから、歳入も97兆円です。もっとも、歳入の中には税収等63兆円のほかに「公債金」34兆円が含まれています。これは、税収等だけでは歳出のための費用が賄えないため、国債を発行して資金を調達する必要があるからです。一般には、歳入予算の公債金を財政赤字と呼ぶ場合が多いようです。

 もっとも、歳出予算の中には「国債費」という項目があり、利払い費9兆円と償還金14兆円が計上されています。後者は、過去の借金を返済するために新たに借金をするだけですから、「赤字」と呼ぶべきではない、という考え方もあります。何れにしても赤字が巨額なことに違いはありませんが。

基礎的財政収支も11兆円の赤字

 歳出予算の中の「国債費」は、過去の借金の利払いと償還ですから、これを除いた「今年の費用」が「今年の税収等」で賄えているか否かを見よう、という考え方で計算されているのが基礎的財政収支、英語ではプライマリーバランスというものです。これも11兆円の赤字となっています。

 つまり、過去の借金の話は忘れたとしても、今年の税収等だけでは今年必要な費用が賄えず、11兆円も不足する、というわけです。これはさすがに問題だ、ということで、政府は2020年度までに基礎的財政収支を均衡させる、という目標を立てていますが、実現の見通しは立っていません。

国の借金は900兆円、GDPの1.6倍と巨額

 毎年の財政が赤字なので、政府は毎年借金を重ねています。これが積み重なって、借金(長期債務残高)が900兆円にも上っています。名目GDPの1.6倍です。国と地方の合計では1100兆円と、GDPの2倍です。

 一般家庭で年収の2倍の借金があったら、大変ですね。見合いに資産がある(たとえば住宅ローンを借りている場合)場合や、今後の給料が増えていく見込みがある場合などは、深刻ではありませんが、日本政府の場合、資産取得のための借金ではなく、単に収入で支出が賄えない赤字を補うための借金が積み上がっているので、問題は深刻だ、という人が多いのです。

 もちろん、日本政府も巨額の資産を持っていますし、将来増税することも十分に可能ですから、日本政府が将来破綻するか否かは諸説ありますが、破綻するかもしれないと本気で心配している人が多いことは間違いありません。筆者は楽観していますが、これについては補論で。

国際的にも日本の財政赤字は巨額

 国際的に見ても、日本の財政赤字は巨額です。毎年の赤字で見ても、債務残高で見ても、先進各国の中で最悪レベルです。各国ともにリーマン・ショック後に財政収支が大幅に悪化しましたが、その後、景気の回復とともに状況は改善しています。日本についても状況は同様ですが、毎年の赤字の水準が大きい、というわけです。

<財務省ホームページ>
先進各国の財政収支(GDP比)
先進各国の純債務残高(GDP比)


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