赤坂英一の野球丸

2017年9月20日

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 かつては内角を突いて打者をのけぞらせてケロリとしていた投手が、いまや外角だけで打ち取ろうとコーナーの片隅へ怖々ボールを置きにいっている。年齢を重ねて往年の球威を失い、引退目前のベテランならまだしも、若くしてすっかり弱気になってしまった投手の姿は見るからに痛々しい。今季で言えば、阪神の藤浪晋太郎がその最たる例だ。

ペドロ マルティネス投手(Kirk Irwin/GettyImages)

 プロ5年目の藤浪は11試合に登板して3勝5敗、防御率4・12。5月4日のヤクルト戦以来勝ち星から見離され、4度も二軍落ちさせられた。二軍での登板は見ていないが、知り合いのトラ番記者に聞くと、自分の胸元を指して「こっち(インサイド)を全然攻めようとせん。外ばっかりですわ。あんな投球では勝たれへん」と渋い顔で教えてくれた。

 私がじっくり藤浪の投球を見る機会に恵まれたのは8月27日、東京ドームでの巨人戦だった。150㎞台の真っ直ぐと曲がりの大きなスライダーを使い分け、六回までは2安打無失点1四球とまずまず。それが、100球を超えた七回、1死から村田修一に与えた死球を境に突如崩れ始める。続く亀井善行にタイムリー二塁打を打たれて1点を失い、さらに長野久義の打席で暴投して亀井が三進。捕手の坂本誠志郎がホームベースより外に構えているのに、すっぽ抜けたスライダーが長野の顔付近に飛んでいったほど。結局、6回3分の1、3安打3失点で負け投手である。

 9月5日、マツダスタジアムでの広島戦も目を覆わんばかり。初回にいきなり田中広輔を四球で歩かせ、松山竜平に本塁打を浴びて2失点。味方が3-2と逆転してくれた直後の三回も、内野安打と2連続四死球で満塁のピンチを招き、安部友裕の2点タイムリーであっさり逆転である。5安打4四死球5失点と、ゲームをつくることすらできなかった。

 12日、甲子園での巨人戦も、やはり死球から崩れた。5-1と4点のリードで迎えた四回、先頭の坂本勇人に投げた146㎞の真っ直ぐがすっぽ抜け、左肩にぶつけてしまう。ここから村田に四球、亀井、長野の連続タイムリーで3点を失い、3回3分の1でノックアウトだ。これで4試合連続で与死球を記録しており、「(ボールが)抜け出すとダメですね。(死球を)ぶつけると腕が振れなくなる」と金本知憲監督も頭を抱えていた。

 いまの藤浪は、死球を怖がって意識過剰になるあまり、かえって制球を乱し、逆に死球をぶつけることが増えている。何がきっかけだったのかはわからない。ただ、2年ほど前から、「あいつは死球をぶつけても構わないような投球をしてくる」と、他球団の悪評を買っていたのは確かである。

 15年の広島戦では、送りバントの構えをしていた黒田博樹に、2球続けて頭部付近へ投げ込み、グラウンドで怒鳴りつけられた。藤浪は即座に帽子を取り、長身をふたつに折って深々と頭を下げていたものだ。真っ青になり、頬を強張らせていた表情は忘れがたい。

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