定年バックパッカー海外放浪記

2017年9月24日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2016.6.18.~9.14 89日間 総費用18万2000円〈航空券含む〉)

名物自家製アップルワイン

 7月5日。サラハンからローカルバスを乗り継いで5時間、午後3時にキナウル渓谷のサトレジ川の畔の集落カルパに到着。数軒しか宿がなく“チニー・バンガロー”(中国人バンガロー)という可笑しなネーミングのゲストハウスに投宿。見晴らしの良い高台にあるが、荷物を持って登るのが一苦労。

キナウル渓谷を走る山岳道路

 マネージャー兼ボーイ(従業員は一人だけ)は気が利いて何でも手際が良い。途中のディバ(食堂)で飲んだ自家製アップルワインが旨かったので相談すると「ここのオーナーの自家製は評判ですよ」とのこと。オーナーと交渉したら750ccボトル一本で150ルピー(≒270円)とのこと。

車窓の下は千尋の谷

 早速夕焼けとピーナッツをつまみにバルコニーで晩酌。淡いリンゴの香りがして少し酸味があり悪くない。ちなみにアルコール度数は10~11度くらいか。白ワインより若干軽い感じ。

ローカルバスの車内には濛々たる砂埃。乗客はマスクで対応

陰謀史観的論点から社会問題を解く内科医、ガーグ博士

 アップルワインで気持ちよくトワイライトタイムを楽しんでいたら隣の部屋の客が戻ってきてテーブルの空いている席に座った。40代後半のインド紳士である。ジャイプールから車を運転して一週間の予定で避暑に来たという。子供の学校の関係で今回は一人なので本を読んでのんびり過ごしているとのこと。

ガーグ博士は論駁し難いタフガイおやじ

 暇を持て余していたらしくインド訛りの早口の英語で世間話を始めた。大きな国立病院で内科医をしているようだ。この病院には1日1万人の患者が来るという。彼も1日に数百人の患者を診ているという。それから博士はやや不可解な自説を展開し始めた。

 「インドでは近年病人が急増しているが、原因は劣悪な工業製品である。父の時代には商品は良心的な職人魂(craftmanship)で造られていた。例えば髭剃り用カミソリは一度購入すれば一生使えた。すなわち生産者は品質を保証していたから人々は安心して生活できた。それが現在では悪徳資本家と腐敗した政府のために劣悪な工業製品が世の中に溢れるようになった」

サラハンから雪を頂く高峰がヒマラヤ山脈を眺望

日本製品も品質は怪しい?

 「世界的に称賛されている日本の工業製品すら同様だ。ソニーやトヨタでも数年しか保証しない。高い値段を払ってもメーカーは実質的に品質保証しない。昔はメーカーが誇りを持って何十年さらには一生保証したものだ」

ミシンを操るサラハンの靴職人

 どうも博士が根本的に工業製品の品質保証制度を理解していない様子なので「品質保証期間と価格には相関関係がある。保証期間を無闇に長くすれば膨大なコストがかかる。CDプレーヤーなど通常オーディオ製品の保証期間は1年または長くても2年程度である。製品に欠陥があれば99%は1年以内に消費者が欠陥に気付くか製品が故障するからである。逆に1年以上経過して製品に問題が発生するのは消費者が乱暴に取り扱ったり不適切な環境で製品を使用しているケースが大半である。また現代では技術進歩が速いので10年も経過すれば製品そのものが陳腐化してしまうケースもある」などと真面目に説明しても全く聞き入れない。

カルパの靴屋さんは子沢山

家電製品の欠陥により眼科・耳鼻科の患者が急増?

 私の経験ではインド系の紳士には自説に拘泥するタイプの御仁が比較的に多いようだ。まさにガーグ博士は自説拘泥派であった。欠陥TVや欠陥オーディオ製品のために眼科や耳鼻科の患者が近年急増しているという。

 「そんな深刻な健康被害が発生しているなら政府が取り締るはずであるし、メディアも報道するのではないか。そんなニュースは聞いたことがない」と私が疑問を呈すると博士は「政府は消費者の訴えを聞かないし、メディアも報道しない。それは資本家・政治家・マスコミが結託して問題を揉み消しているからだ。社会の支配層による陰謀なのだ。一般の人間は知らないだろうが私は医者だから知っているのだ」と力説。

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