サイバー空間の権力論

2017年9月29日

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 前回は「世界共通のインターネット」という理念が崩れかけていることを論じた(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10455)。ネットに限定されず、国家間や国内の市民同士の争いなど世界中で生じている昨今、壊すべき旧来の理念と、守るべき理念の区別もまた重要だ。

 産業界においても、これまでとは一線を画する現象が見受けられる。IT企業等を筆頭とする新たな産業が既存産業と競争関係にあるのが現代社会だ。この争いは技術発展が期待できる一方、既存産業の衰退やその構造転換が、多くの問題をもたらすこともある。今回は競争が過熱する「オンライン動画配信サービス」と日本の放送業界の関係について考察したい。

(iStock/Daviles)

オンライン動画配信の黒船「ネットフリックス」

 カドカワの調査によれば、日本における有料の動画配信サービスの利用者は推定1100万人とされる。その多くはAmazonに年会費を払うことで他のサービスと併用できる「Amazonプライム・ビデオ」であることが推測されるが、とはいえ日本においても有料の、お金を払ってでもコンテンツを観ようというユーザーは増えている。

 オンライン動画配信サービスは主に月額数百円~高くとも2千円を越えない程度を支払うことで、好みの動画がスマホやタブレット、パソコン等で見放題となるサービスであり、ここ数年急速に普及している。動画以外では音楽業界にも配信サービスは幅広く普及しており、「spotify」や「Apple Music」、「Google Play Music」等海外のサービスの他、日本でも「LINE MUSIC」や「AWA」をはじめとして、数多くのサービスが存在する。ユーザーはどのサービスに金銭を支払うかを選択中であり、今後さらに競争が過熱することが予想される業界でもある。

 オンライン動画配信の大手は、上述の「Amazonプライム・ビデオ」や「Hulu」、そして筆者が注目する「ネットフリックス(Netflix)」があり、本稿はネットフリックスについて論じたい。ネットフリックスは1997年にアメリカで設立し、当初はオンラインでDVDレンタルを行っていた(ネットの注文を受けて郵送でDVDを顧客宅に配達するサービス)が、その後2007年に現在のような動画配信をメインとし、2015年に日本にも進出。当時は動画配信界の「黒船」とメディアが騒ぎ立てたのも記憶に新しい。またアメリカを含めた全世界ユーザーが2017年4月の段階で1億人を突破していることもあり、今後も成長が期待されている。またアメリカの若者820人への調査では、他の動画配信サービスと比較してオリジナルコンテンツの質ではネットフリックスが圧倒的な支持を得ている

 ネットフリックスの強みはオリジナルコンテンツもさることながら、その独自の「レコメンド機能」にある。視聴者がどの動画をどの程度の時間視聴したか、など詳細なデータをネットフリックスが分析することで、膨大な動画の中から視聴者の好みに合わせた動画をオススメしてくれるというものだ。

 さらにネットフリックスはユーザーがストーリー展開を選択できる実験的なアニメーションの配信も行っている。これはユーザーの好みに合わせた内容を配信できるだけに留まらず、ユーザーの好みを把握し、よりユーザーの嗜好を知る「大量のデータ」が獲得できる。

 なぜユーザーの好みのデータが必要なのかといえば、それはネットフリックスが抱えるユーザー数にある。世界190以上の国と地域で運営されすでにユーザーは1億人を越え、アメリカ国外のユーザーも増加しているネットフリックス。世界中のユーザーの好みを把握し、それらに合わせたコンテンツづくりを行うことで、結果的にさらなるユーザーの獲得を目指していることが推測される。

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