サイバー空間の権力論

2017年6月28日

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 前回は中国の電子決済機能から、社会統治技術の問題について論じた。社会は技術環境に多大な影響を受けるが、それに伴い人々の意識も変容が生じる。技術的な条件が変化したとき、人々がその社会の中でどのような行為を行うか、そこには我々ひとりひとりの意志が深く関わるだろう。またこの問題と並行して、技術が我々の意志を先回りするといった人間の主体性に関わる問題も議論すべきであろう。人々の意識や意志は情報社会においてますます重要性を増している。今回は我々が意識的(ないし半ば無意識的)に行う検索の深刻な問題について論じたい。

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不正確な医療情報、
昨年話題となったウェルク問題

 我々は日々スマホやPCから多くの事柄を検索し、知識を得ている。故に検索とその結果上位に表示されたサイトの知識は、我々に多大な影響を及ぼしていることにもはや異論の余地はない。

 検索最大手グーグルの公式ブログによれば、2015年の段階で全検索の5%は健康情報(health-related information)だという。そこには病気や治療方法以外にもダイエットや美容情報なども含まれていることが推測されるが、いずれにせよ健康情報に虚偽の知識が紛れていれば、最悪の場合人を死に至らしめる可能性がある。フェイクニュースのような政治的問題もさることながら、検索問題は人の生命や、長期的にみれば人類の知的体系に影響を及ぼすことが示されている。

 日本においては2016年、DeNAが運営する医療情報サイト「ウェルク(WELQ)」が、不確かな医療情報をネットにばら撒いていたことが発覚し大きな社会問題となった。DeNAが謝罪会見を開き閉鎖されたこのウェルクだが、不確かな医療情報を多数公開していただけでなく、非常に安価な価格で外注したライターに、他のウェブサイトから画像やテキスト内容を(参考にしろという名目で)事実上無断引用するよう指示していたことも発覚した。ウェルクはさらに検索エンジン最適化(SEO対策)も行っており、検索上位に記事が掲載されるように構成されていたこともわかっている。つまりグーグル検索によって上位に掲載されるサイトが必ずしも信頼できるサイトではなく、不正確な情報が含まれていることが示された。

信頼性が疑われるサイトは未だ存在する

 ところで、ウェルクの閉鎖によってネット上の知識は正常化されたのか。実はウェルク以降もいくつかの大手サイトに内容的な問題が指摘されている。中でも大きく問題を指摘されたサイトに「ヘルスケア大学」が挙げられる。このサイトはサイバーエージェント出身者が設立した「リッチメディア」が運営しているが、注目すべき点として、医師や専門家が記事の監修を行っていることが謳われている。

 だが一部の記事内容に問題があることや、参画医師の数が急激に増える一方、医師の側から名前が掲載されていたことも把握していなかったといった声が挙がり、混乱が生じている。また他の現役医師からの批判などを受け、ヘルスケア大学は一部の記事を非公開化し、また複数医師による記事監修制度などを発表しているが、信頼を回復するには時間がかかるだろう(筆者も運営による発表に疑問を持ったことなどをブログで表明している)。

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