オトナの教養 週末の一冊

2017年7月7日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 今年のゴールデングローブ賞授賞式でのメリル・ストリープのスピーチは、トランプを暗に批判したとして日本でもニュースで話題となった。彼女に限らず、ハリウッドをはじめとする映画人はよく政治的発言をしているイメージがある。一方、日本はどうだろうか? タレントや俳優といった注目を集める立場にいる人間が少しでも政治的発言をしようものなら、どんな内容であってもそれが彼らにとってプラスのイメージとなるとは考えづらい。

 そこで『なぜメリル・ストリープはトランプに嚙みつき、オリバー・ストーンは期待するのか~ハリウッドからアメリカが見える』(幻冬舎新書)を上梓した朝日新聞「GLOBE」記者の藤えりか氏に、なぜ映画人たちは政治的発言をするのか、転換期を迎えているハリウッド映画、そして中国マネーの影響などについて話を聞いた。

――本書のタイトルはかなり長めですが、意図があるのでしょうか?

藤:たとえば日本では、ハリウッドをはじめとする映画の俳優や監督、プロデューサーの記者会見は、映画の内容やPRに関する質問が目立ち、政治や社会情勢などについての質問はほとんど耳にしません。特にエンタメ色の強い映画では顕著です。

 でも、私が朝日新聞のロサンゼルス支局長時代に現地の記者会見やインタビュー、また新聞やテレビなどの報道で目にしたのは、俳優や監督、プロデューサーが映画そのものだけでなく政治や社会情勢についても積極的に発言する姿でした。私は映画専門の記者ではないだけに、国際報道の記者として現地の記者に刺激を受けながら、映画界を取材する際は映画の内容や論評にとどまらない、政治や経済、世相にからめた取材となるよう努めました。日本に戻ってからもそうしたインタビューを続け、政治について語りたい映画人のいわばメッセンジャーとしての役割を担えれば、とGLOBEで「シネマニア・リポート」という連載記事を始めました。インタビューなど当事者の声を基本とするその連載をベースとした本書の意図がきちんと伝わればという思いから、タイトルがつけられました。担当編集者さんいわく、幻冬舎新書史上最長のタイトルだそうです。

――連載期間がちょうど欧米諸国の政治的な激変期と重なっています。

藤:連載を開始したのが、昨年の6月で、ちょうどイギリスのEU離脱が決定した月でした。しかも連載1回目が、21世紀のベルリンにヒトラーが蘇るというベストセラーをもとにしたドイツ映画『帰ってきたヒトラー』。この映画では、ヒトラーを演じるオリヴァー・マスッチが、一般人と接する場面をほぼ台本なしで、ゲリラ的に撮影しています。そうした場面から、戦後ヨーロッパの優等生となったはずのドイツの一般の人たちのなかにも、ヨーロッパで問題となっている排外主義やポピュリズムが蔓延していることがうかがえます。インタビューしたマスッチは、「撮影されていることがわかっていても、外国人排斥や人種差別を口にする人がいた」と、驚きとともに危機感を口にしていました。

 ご存知のようにその後、アメリカではトランプが大統領選で勝利。インタビューではよく、大統領選前後のトランプ旋風や、ヨーロッパで広がる排外主義やポピュリズムなどの話題になりました。結果的に、この連載期間がちょうど「beforeトランプ」「afterトランプ」となり、その間の映画人の肉声を一冊にまとめることができました。

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