WEDGE REPORT

2017年10月9日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『銀盤の軌跡』(新潮社)などの著書もある。

 ニューヨークのもっともわかりやすいシンボルといえば、自由の女神、エンパイアステートビル、そしてイエローキャブである。映画などでも、この3つのうちのどれかが出てくれば、一目でニューヨークだとわかる。

 でもそのシンボルの一つであるイエローキャブに、危機がおとずれている。Uberなどをはじめとするアプリを使用した配車サービスに押されて、営業難に陥っているというのだ。

(iStock/johnkellerman)

 ニューヨークに訪れたことのある人なら、一度くらいはイエローキャブに乗ったことがあるだろう。日本と同じように、市内中どこでも空車を見つけて手をあげれば停まってくれるイエローキャブは、観光客にとっても便利な乗り物だ。

 現在のイエローキャブのメーターの基本料金は2ドル50セント。その後、5分の1マイルごと、渋滞中、停車中は1分に50セントずつ上がっていく。夜間やラッシュアワーには追加料金などもあるが、マンハッタン内ならよほど混まない限り、チップを入れても20ドル以上かかることは滅多にない。東京都内のタクシーに比べると、かなり割安だと思う。

イエローキャブ始まって以来のライバル登場

 もともとこのイエローキャブ唯一のライバルといえば、リムジンやセダンなどを使ったカーサービスくらいで、長い間ニューヨークのタクシー市場を独占してきた。

 だがここ数年の間に、Uber, Lyftなど、携帯アプリで気軽に呼ぶことのできる配車サービスが登場。ニューヨーカーの間ではすっかり浸透し、イエローキャブの顧客を減らしている。特にUberは世界的に展開し、ニューヨークのみならず、世界各国でタクシー協会などから大きな反発を受けているのが現状だ。

 先日ラガーディア空港の帰りにイエローキャブに乗り、珍しい女性のドライバーと世間話をしていたときのこと。

 「Do you feel Uber affected your business?」(ウーバーなどが、あなたの仕事に影響を与えていると思いますか?)

 まだ30代に見える黒人の女性ドライバーは、こう答えた。

 「In the beginning I didn’t think they would, but actually they are affecting us.」(最初は影響があるとは思わなかった。でも実際にはあるわ)

 このところ、お客の流れが悪い。収入も減った、という。

暴落した営業許可書「メダリオン」

 イエローキャブを運転するには、タクシー&リムジン協会が発行する「メダリオン」という営業許可証が必要だ。JFKやラガーディアなど空港で客待ちをするタクシーラインに入るにも、このメダリオンが必ず必要である。雇われドライバーは、メダリオンの所有者から、イエローキャブをレンタルしているのだ。

 イエローキャブの供給過剰を防ぐために、ニューヨーク市内ではこのメダリオンの数は1万3千台くらいに制限されてきた。

 そのメダリオンの取引価格は、2013年あたりには1枚につき130万ドルという、高級コンド並みの値段だった。それがこのところ、20万ドル程度まで暴落しているのだという。

 Uberは一般人が空いている時間に自分の車を使ってお小遣い稼ぎをする仕組みで、ドライバー登録も簡単に出来る。いろいろ規則にがんじがらめとなったイエローキャブのドライバーたち、投資をしたメダリオンオーナーにとって、最初からフェアな戦いではない、と主張するのはもっともなのである。

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