使えない上司・使えない部下

2017年10月25日

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 今回は、69歳のプロレスラー、ザ・グレート・カブキさん(本名・米良明久)を取材した。1964年に日本プロレスに入団し、70年からアメリカに遠征し、各地で活躍する。73年に全日本プロレスに移る。81年、悪役レスラー・ザ・グレート・カブキとしてアメリカで大ブレイクし、全米で暴れまわる。顔にペインディングをして、毒霧を吐く姿が話題となる。日本では、技で魅了するレスラーとして全日本、SWS、WAR、新日本などのマットに上がる。

 98年に引退後は、居酒屋「BIG DADDY 酒場 かぶき うぃず ふぁみりぃ」を営む。現在も試合に参加することがある。2014年には、著書『"東洋の神秘" ザ・グレート・カブキ自伝』(辰巳出版)を著し、静かな話題を呼んだ。

ザ・グレート・カブキさん

選手のよさを見つけ出し、どういう商品にしていくか

 俺は中学校を卒業した15歳のとき、日本プロレスに入った。当時、とてもお世話になったのは、大相撲出身レスラーの芳の里さんだった。豊登さん、吉村道明さん、芳の里さんの3人の付き人をしていた。芳の里さんのことが特に印象に残っている。あの方とは、会社員の上司と部下の関係に近いのかな…。

 芳の里さんは俺には、優しかった。1度だけ、叱られたな。俺の試合を見ていて、「あんな攻め方は、するもんじゃないよ」とちょっと厳しく言ってくれたんだ。

 付き人をしていると、芳の里さんが何をしようとしているか、何をしてほしいのかが、わかるようになる。俺は、いつも先を読んで準備をしていた。

 プロレスでも周りが見えて、自分の役割や立ち位置がわかっていることは大切なんだ。相手の選手やお客さんのことが見えていないと、いいレスラーにはなれないと俺は思う。

 試合でも、「しょっぱい」レスラーはダメだ。「しょっぱい」はもともと、大相撲で使う言葉で、技術が未熟でぎこちなく、不細工なことだよ。「しょっぱい」レスラーは試合の流れや、相手のよさや持ち味がわからない。お客さんが何を求めているかも考えない。だから、試合がつまらない。多くのお客さんを呼ぶことはできないだろうね。

 俺が16~18歳の頃、年齢が上の大物が日本プロレスに次々と入門してきた。(ラッシャー)木村さんや坂口(征二)さんたちだ。彼らは当時、22~25歳。俺よりも体が大きいし、大相撲や柔道で実績がある。

 俺が彼らに嫉妬していたか、って? そんな思いは、全然ないよ。彼らは俺よりもはるかに年上だから。俺よりも後から入門したから、後輩にはなる。それで「おい、坂口」と呼び捨てにして、命令したことなんてない。

 当時のプロレス界では、先に入った者は、年上者が後から入ってきたときにも、兄弟子としていばっていた。俺は、それをしなかった。世の中の常識みたいなものと比べて違うんじゃないかな、と感じていた。あの頃のプロレス界では、少ないタイプだったのかもしれない。

 しばらく、俺が坂口さんに練習を教えていた。この男がレスラーという商品として活躍し、お客さんを呼ぶことができるようになってくれればいいな。俺たちにメシを食わしてくれる人かもしれない。そう思っていた。客を呼べる選手が育てば、会社が儲かり、みんなの選手がうるおうわけだから…。

 選手のよさを見つけ出し、どういう商品にしていくか、どう売り込むか。こんなことを考えるのが、先輩や上の人がするべきことだと俺は思う。

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