使えない上司・使えない部下

2017年10月25日

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「俺が、俺が…」でトップを取ったレスラーは少ない

 相手の選手やお客さんのことを考えて試合をすることができないと、いいレスラーにはなれない。「俺が、俺が…」という姿勢の選手がトップを取ったのはアメリカでも、日本でも少ない。

 猪木さん? 違うよ。猪木さんは、実際に会うと低姿勢な人だよ。日本プロレスのときからだから、もう長いね。俺には(あごを前に突き出すまねをして)「どーも、どーも」って挨拶をしてくれる…(笑)。

 あの頃は、新日は、全日よりは「俺が、俺が…」という選手が多かったのかもしれない。全日では、ジャンボ鶴田も「俺が、俺が…」という時期があった。あるとき、外国人選手を倒し、お客さんのほうを見て、「お~」と腕を上げてガッツボーズをとった。タッグを組んでいた馬場さんは、おもしろくなかったみたい。試合を終えた後、ジャンボに何やら言っていた。(馬場さんの話し方のまねをして)「バカ野郎。お前なあ、外国人選手や俺のことをもっと考えろ」とね…(笑)。

 ジャンボもいいレスラーだったけど、馬場さんの前ではおとなしかった。逆らったら、全日ではトップにはなれないから…(苦笑)。俺が若かったころは、馬場さん、猪木さん、大木(金太郎)さんの中では、馬場さんがいちばん好きだった。面倒見がよかった。俺には厳しく怒ることをしない。まぁ、大仁田(厚)には怒ることもあったのかな。

 馬場さんは自分が育てた選手が活躍すると、うれしそうだった。たとえば、ジャンボや三沢(光晴)ですよ。ところが、海外で力をつけ、日本に戻ってきた日本人レスラーをなかなか認めない。俺や源ちゃん(天龍源一郎)みたいなタイプ。おもしろくなかったのかもしれない。

 源ちゃんは俺の後から入門したけど、俺を追い抜かし、はるかに上に行くんだろうなと思った。嫉妬なんかしないよ。俺は自分の役割とか、立場を心得ているから。

 源ちゃんは、馬場さんに「こうしましょうよ」とアイデアをよく出していた。馬場さんは、なかなか認めない。だけど、ジャンボの案は受け入れる。生え抜きで、自分に忠実な選手をかわいがるんだ。

 馬場さんは、プロ野球の巨人の投手だったでしょう。挫折があり、プロレスの世界へ入った。そこにコンプレックスがあったんじゃないかな…。全日本プロレスを、東京読売巨人軍のようにしたかったんだろうと思う。

 当時の巨人は、生え抜きの選手がレギュラーを占めていた。他球団や大リーグから来た選手が少なかった。あのチームづくりを全日本でしたかったんじゃないかな。そして、読売グループのオーナーのナベツネさんのようになりたかったんじゃないかな。

 馬場さんは、本当にレスリングが上手かった。お客さんのことをよく考えて、試合ができる。見えているんだ。あの頃、俺が見たレスラーでは、そのあたりはいちばんだよ。ある時期までは、俺にとっていい上司だったんだろうね。

⇒(続く)

  
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