WEDGE REPORT

2017年11月17日

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設立から25年、地域密着を理念に歩んできたJリーグが、数年前から東南アジアを中心とした海外展開に積極的に乗り出していることをご存知だろうか。ASEAN出身の選手がJリーグで活躍し、すでに経済効果も生まれている。こうした「アジア戦略」の狙いや取り組みについて、株式会社Jリーグマーケティング 海外事業部の大矢丈之氏に話を伺った。

今年の夏、北海道コンサドーレ札幌に加入したタイのチャナティップ選手(23)
ⓒJ.LEAGUE

Jリーグの「アジア戦略」とは

「アジアに目を付け始めたのは2011年ごろです。東日本大震災があって来場者数が大きく落ち込み、このままではJリーグの成長戦略を描きづらいと危機感を抱くなか、考えたのがマーケットをアジア全体に拡大することでした」(大矢氏)

 もともとアジア戦略を構想したのは前任の山下氏である。タイに赴いた山下氏は、想像以上のサッカー人気を肌で感じた。さらに、アジアでは政界や経済界の大物がサッカーに携わっていること、彼らが日本サッカーを尊敬の眼差しで見ていることも知った。

「Jリーグの仕組みを輸出することも考えましたが、現地に赴いて交流を重ねるうちに、培ってきたノウハウを無償で提供することにしました。なぜならアジア全体のサッカーを強化し、その中で日本がもっとも強い存在になることがベストだと考えたからです」(大矢氏)

株式会社Jリーグマーケティング 海外事業部の大矢丈之氏

 まずはタイリーグと提携を結び、サッカー教室や指導者の派遣などの貢献事業から始めたが、日本の景気が落ち込んでいくなか、だんだんとその目的を「新たな市場の創出」にシフトさせていったと言う。

 サッカーのおもな収入の柱は、「放送」「スポンサー」「チケット」「グッズ」の4つである。日本の人口はこれから減っていくので、国内だけを見ていれば市場の縮小は避けられない。そこに海外のマーケットをプラスすることで、地域活性にもつなげていくのがJリーグの狙いだ。

東南アジアの人気選手がもたらす「インバウンド効果」

タイのチャナティップ選手
ⓒJ.LEAGUE

 すでに大きな実績も上げている。今年の夏、北海道コンサドーレ札幌に加入したタイのチャナティップ選手(23)は、2年連続ASEANのMVPに輝いたスタープレイヤーだ。Instagramのフォロワー数は190万人。Facebook Liveで練習風景を流せば330万人が視聴する。チャナティップ選手の札幌移籍が決まった直後、Jリーグはタイ最大手の放送局True社と交渉し、Jリーグの放映権を売ることに成功した。5月に開始した放送は視聴率も良く、Jリーグのタイ語版Facebookページはすでに15万人ものフォロワーを集めている。

 以前は、海外での放映権は代理店任せだった。現在も代理店を通す販売体制は変わらないが、自らも足を運び、現地の放送局と直接コミュニケーションを取るようにしている。

「タイはもともとスポーツのチャンネルが豊富で、サッカーではイギリスのプレミアリーグの人気が圧倒的です。そんな状況の中、タイの人たちにJリーグの試合を見てもらうにはどうしたらよいかと考えて思いついたのが、現地の人気選手をJリーグに移籍させることでした。自国の人気選手が海外で活躍していれば、その姿を見たいと思うはずだと考えました」(大矢氏)

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