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2017年11月27日

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金子熊夫 (かねこ・くまお)

外交評論家・エネルギー戦略研究会会長

外交評論家。元外交官、外務省初代原子力課長、元東海大学教授。退官後エネルギー戦略研究会(通称EEE会議)を創設し、会長として現在も活躍中。主な著書は「日本の核 アジアの核」(朝日新聞社刊)、「小池・小泉『脱原発』のウソ」(飛鳥新社、11月6日発売)など。1937年愛知県生まれ。ハーバード大学法科大学院卒。

 10月の衆議院総選挙で、自民・公明両党が大勝した結果、野党が唱えた「原発ゼロ」の懸念は当面後退したものの、日本の原子力は依然として未曽有の苦境に立たされている。目下の最大の課題である原発再稼働問題は、福島原発事故から6年半にして再稼働にこぎ着けたのはわずか5基。原子力規制委員会の安全性審査はあまりにもスローだ。このままのペースでは、2030年までに原発のシェアを20~22%にという政策目標を達成できるかどうか甚だ覚束ない。

 しかし、問題はそれだけではない。青森県下北半島の六ヶ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場の竣工、操業開始がさらに遅れそうなのが特に気になる。これまでに何度も完成時期が延期されたが、いよいよ18年度上期には竣工するとされてきた。ところが、最近になって、非常用電源建屋内に雨水が浸入するとか、ウラン濃縮工場の排気ダクトに錆(さび)が生ずるなどのトラブルが相次いで明らかになり、原子力規制委員会の安全審査が中断されたため、本格操業開始はさらに遅れることが決定的となった。

六ヶ所再処理工場にはIAEAの査察官が常駐し、核の平和利用を監視している(YOMIURISHINBUN/AFLO)

 六ヶ所再処理工場は、我が国の核燃料サイクル政策の要(かなめ)である。かつて外交官として再処理問題に関する日米原子力交渉に直接関与した経緯もあって、同工場の操業開始を期待してきた筆者としては、複雑な心境である。

 この機会に、一般読者にはなじみが薄いと思われる六ヶ所再処理工場問題と日米原子力協定の関係について、簡単に説明しておきたい。

 我が国の原発の燃料であるウラン燃料は、昔から米国など外国からの輸入である。そして、一度原子炉で燃やした後のウラン燃料を化学的な方法で再処理して、抽出されたプルトニウムを高速増殖炉や普通の軽水炉(プルサーマル)で再利用すること─これを「核燃料サイクル」と呼ぶ─が日本の原子力政策の基本である。資源小国としては、せっかく輸入した貴重なウラン資源を最後まで効率的に利用する必要があるからだ。

 ところが、米国産ウラン燃料を日本が再処理するためには事前に供給国である米国の同意(承認)を要することが日米原子力協定に明記されている。抽出されたプルトニウムが勝手に軍事目的、つまり核爆弾の製造に転用されるのを防ぐためだ。

 実は、初期の日米原子力協定では、この米国の事前同意は、各原子力発電所の使用済み燃料を再処理するたびに、いちいち(ケース・バイ・ケースに)与えられる仕組みになっていて、米国側の意向に左右されやすく、日本側にとって極めて不安定であった。事実、1977年に茨城県東海村に建設されたパイロット的な再処理施設(年間処理能力210トン)の運転開始直前に米国政府が「待った」をかけてきたため、日米が激突した。

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