安保激変

2017年11月30日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 代わりに、ホワイトハウス内では、強硬派が勢いを増しているとみられる。その代表格はポンペオCIA長官で、北朝鮮が来年にもICBM能力を完成させると見込まれる中「やるなら早いほうがいい」と主張していると伝えられている。その他の関係者も、軍事的衝突が近づいていると声をそろえる。対話を重視する発言を繰り返しながら実現できていないティラソン国務長官の辞任が近いと噂されているが、その後任の最右翼はポンペオ長官である。仮に強硬派の国務長官が誕生すれば、一気にホワイトハウスが攻撃モードに移る可能性も否定できない。10月の解散総選挙前後に、安倍首相や小野寺防衛相が、年末にかけて北朝鮮をめぐる緊張が高まる可能性を指摘していたが、このようなホワイトハウス内の動きを把握していたのかもしれない。

武力行使の可能性高まるも、課題は残ったまま

 1つの注目点は、クリスマス前後における在韓米軍の家族の動きである。在韓米軍は元々家族の帯同を認められていなかったが、朝鮮半島情勢が緊迫する中、ソウル在住の米国市民と並んで武力行使の足かせになっている。一部には、クリスマス休暇中に家族を韓国から避難させることによって、武力行使のハードルを下げると同時に、北朝鮮にそのシグナルを送って圧力を強めるという考えが広がっている。米軍はソウル在中の米国市民の避難訓練を年に2回行っていることに加えて、日米の間で韓国にいる日本人の避難に関する協議が行われていることが断片的に報道されており、非戦闘員退避の取り組みも米国による武力行使のハードルを下げることにつながる。

 米太平洋軍は、すでに複数の北朝鮮攻撃計画を大統領に提示したと伝えられる。もちろん、米国が武力行使をした場合に予想される北朝鮮の重火器やミサイルによる報復にどう備えるのか、武力行使の国際法上の根拠をどう担保するのか、米国の武力行使に中国がどのように反応するのか、武力行使後の朝鮮半島にどのようなビジョンを描くのかなど、たとえ限定攻撃であっても、米国による武力行使には多くの課題が残っている。

 安倍首相は、軍事力行使も含めたすべての選択肢がテーブルの上にあるというトランプ大統領の方針を全面的に支持している。北朝鮮との過去の対話路線が失敗したことは明白であり、軍事力行使も含めたすべての選択肢を検討するのは正しいし、そうでなければ北朝鮮への抑止も有効ではなくなる。しかし、武力行使に関する課題を残したままでは、北朝鮮に足元を見られてしまうだけである。これらの課題について真剣かつ迅速な議論が求められている。

  
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