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2018年1月5日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

天皇訪韓中の不祥事が発生したら、日韓関係は破たんする
まずは招く側としての社会的雰囲気の醸成が必要

 天皇訪問の賛成論者たちは、天皇の訪韓が両国の友好に寄与するはずだという漠然とした期待を抱いているようだが、私に言わせればあまりにも無責任な発想だ。上で述べたような「反感」が溢れる韓国で、万が一天皇の訪韓中、一部の韓国人による「不祥事」が発生したら、誰が責任を取るだろうか。

 日本の官僚、政治家が韓国で罵声を浴びたり、紙くずみたいなものを投げられたりしたら、それは「ハプニング」と思われるかもしれないが、同じシチュエーションでもその対象が「天皇」になると、それが与える衝撃はあまりにも違う。天皇は日本の「象徴」だからだ。もしそのような事態が起き、それがテレビ画面を通して日本に伝わったなら韓国に反感を持っていた人だけではなく、冷静な立場で静観していた日本人、韓国に好意を持っていた日本人たちも堪忍袋の緒が完全に切れ、韓国に対する日本人の感情は取り返しがつかない状況に陥るだろう。私はそれを懸念しているのだ。

 韓国政府がデモを徹底的に取り締まり、封鎖に踏み切ったとしたら、反日集会や抗議の声は抑えられるという楽観論を述べる人がいるかもしれない。しかし、11月のトランプ米大統領の訪韓を思い出してほしい。当時、トランプ大統領の車が通る車道のわずか数メートル前で行う反米デモを放置したのが韓国政府だ。それに、予告なしの独島エビに、慰安婦ハグの洗礼である。似たようなことが天皇訪韓中に起きたら? 想像するだけでも恐ろしい。

 もちろん、一部の愚かで過激な行為が韓国社会全体の意思を反映するものではない。天皇の写真を持ち出して、デモで侮辱する「一部の韓国人」がいるからと言って、韓国人全体が天皇に対して反感を持っているわけではない。しかし、問題はそのような「一部の行為」ではなく、それに対する韓国社会の態度だ。少なくとも、私は今まで天皇の写真を侮辱するデモや行為に対して、その過激性や非礼を批判する知識人やマスコミを見たことが無い。逆に、マスコミはその画像を伝えながら、これこそが愛国だと、正当な行為であるかのように報道し拡散して来た。

 2015年の慰安婦合意から2年が経った。だが今も慰安婦の銅像は韓国の此処彼処で設置が進められ、自治体が「無許可造形物」であったそれを「公共造形物」として認めるなど「韓国の一部」として定着さえしつつある。このような状況で、天皇の訪韓を求めるなど、あまりにも軽率で、無責任な主張だと評価するのは考えすぎだろうか?

 私は、これから先も永遠に天皇を韓国に招くべきではないと考えているわけではない。だが、マスコミや知識人たちですら国民感情を恐れて天皇を「日王」と呼び、天皇の写真を侮辱することに対し批判することさえもできない現在の「空気」の中では時期尚早だと言いたい。

 あまりにも性急に結果を求めることで、取り返しのつかない事態に陥る可能性がある、いや、今はそのリスクが高すぎる。これが、私が天皇訪韓に反対する理由だ。

 本当に韓国が天皇の訪韓を望むのであれば、まずは歪められた「国民感情」を治癒することを最優先に行動しなければならないのではないだろうか。

  
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