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2017年12月3日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

産經新聞前論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 金正恩は、トランプ大統領の対話呼びかけに挑発をもって応えた。北朝鮮は先週、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、〝火星15〟の発射実験を強行した。「友人になろう」と呼びかけたトランプ氏はメンツをつぶされ、特使を派遣して仲介を試みた中国も顔に泥を塗られた。米政府高官ですら「戦争」の可能性が高まったという悲観的な観測に言及している。自らのコートに入ってきたボールをトランプ大統領は、どう打ち返すのか。緊張が高まるなか、米国内でも日本の核武装、核抑止に関する論議が台頭している。

(Photo by Mark Wilson/Getty Images)

裏切られた期待感 

 今回のミサイル発射は、11月8日にトランプ大統領が、韓国国会で行った演説のなかで、北朝鮮に対話を呼びかけたことへの、先方なりの〝回答〟なのだろう。大統領は、これまでの北朝鮮の政策がいかに無謀、誤りであったかを指摘、北朝鮮が核開発を放棄すれば、「はるかによりよい道を提示する」として、支援を惜しまない考えを表明した。

 大統領はその後も、「ロケットマン」などどいう金正恩に対する揶揄を封印、「私は彼(金正恩)の友人になろうと大いに努力する。いつの日かそうなるかもしれない」とまで述べ、金正恩の前向きな姿勢を強く促した。

 トランプ大統領を対話呼びかけに駆り立てたのは、北朝鮮がことし9月以来2カ月以上、あらたな挑発行動を控えていたからだった。

 「ひょっとして」という期待感は今回の歓迎されない回答で打ち砕かれたが、米国内の専門家の間には、そもそも、北朝鮮は挑発を控えていたのではなく、より高性能のミサイルを完成させることに科学者たちが没頭、そのための時間がかかっただけだとする見方がもっぱらだ。

 だとすれば、米国は完全に北朝鮮の動向、出方を見誤り、次なる邪悪な策謀をめぐらす相手に秋波を送るという無駄な努力を続けていたことになる。トランプ大統領が「ロケットマン」という揶揄を再開したのは、怒り心頭に発した結果だろうが、米国の情報収集能力という観点からは極めて深刻な事態といわざるをえない。

 トランプ大統領が、北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことも北朝鮮を刺激したという見方もなされている。再指定によって北朝鮮がどれほどの痛痒を感じているかはわからず、その反発だとは断定しがたいが、再指定そのものは歓迎すべきとしても、対話を呼びかけておいて、「テロ支援国家再指定」というのでは、北朝鮮もにわかには、応じられなかったろう。

 繰り返すが、再指定そのものは必要、歓迎すべきことであるが、むしろ、もっと早く行っておくべきだった。早い時期に行っておいて、しばらくしてから、対話を呼びかけるのと、対話を呼びかけておいて、舌の根も乾かぬうちに再指定というのでは、やはり状況が大きく異なる。
  
 さて、今後の展開は、どうみるべきか。①武力行使ー戦争②話し合い、交渉による解決③にらみ合いの状況が続くーなどの可能性が予測ができるだろう。

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