WEDGE REPORT

2017年12月3日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

産經新聞前論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

「戦略的忍耐」の再来も 

 第3の展開、このままの緊張状態、にらみ合いが続くという展開だ。

 このケースでは、北朝鮮が核開発放棄の意思を示さない限り対話に応じないというオバマ政権の「戦略的忍耐」政策にみられたように、事態が膠着し長期化する可能性がある。

 トランプ大統領がさきに、中国の習近平国家主席に、北朝鮮への原油供給を停止するよう迫ったが、北朝鮮を〝日干し〟にするための制裁はさらに継続・強化されるだろう。

 しかし、罪のない市民に影響が出ないようにするのは困難であり、その限りにおいて、制裁には限界がある。そもそも北朝鮮は朝鮮戦争当時の1950年6月以来、70年近く制裁を科され続けてきている。いまごろ、制裁を強化しても北朝鮮の指導部が痛みを感じるとは思えない。米国の一部メディアが、「冷戦の再来」などと長期化の可能性を報じているのはこのためだ。

知日派も「核戦略」議論の必要性指摘 

 こうしたなかで、注目すべきは、米国内で日本の核武装、日本に対する核抑止力提供という議論が米国内でなされ始めていることだ。

 米外交界の長老で、ニクソン政権の大統領補佐官や国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏が2017年8月に米紙、「ウォールストリート・ジャーナル」 への寄稿の中で、朝鮮半島での現在の危機が続けば、いずれ日本は核武装するだろうと〝予測〟したのが契機だった。その後、米シンクタンクや軍事専門家の間で、歓迎も含めてさまざまな論議がなされている。

 12月1日の産経新聞で、知日派のケント・カルダー米ジョンズホプキンス大ライシャワー東アジア研究所長のインタビュー記事が掲載され、カルダー教授はこの中で、「米国と日本は、核戦略を集中的に議論し、抑止力の信頼性について、今以上に日本が信頼を持てるシステムを構築する必要がある。韓国や日本に戦術核を配備することも考えられる」との見解を示した。知日派として日本の核アレルギーの存在を承知のうえで、「戦略的な観点から理解されるだろう」と予測している。

 11月2日の米フォックス・ニュースはトランプ大統領へのインタビュー番組を放映したが、聞き手の人気トークショーホスト、ローラ・イングラハム女史が、「日本は米国の核抑止力を望んでいるのではないか」と質問。大統領は、「日本は(現在の状況を)大変懸念している。中国やだれに対しても、北朝鮮にこういうことを許しておくと、自分自身が大変なことになると伝えている」と答えた。明確さは欠くものの、相当に含みのある答えだった。
 
 日本国内でも、自民党の石破茂元幹事長ら、核武装論議について言及するむきが散見されるのは周知のとおりだ。今後の展開は予断を許さないが、わが国の核武装まで他国で論じられることはかつてなかったことだ。北朝鮮の核問題は、日本にとっても、深刻、切実なところまで来たようだ。

  

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