WEDGE REPORT

2018年1月11日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

 漢方を食事に取り入れているのも香港の特徴で、たとえば「例湯」がそのひとつ。日本でいうと「本日のスープ」に当たる。レストランで提供される日替わりスープのことで、香港では「例湯」で店の実力がわかるという人すらいる。

 香港にはスープ専門店もあり、地元の人と食事にいくと、料理とともに必ずスープを注文する。スープには漢方の食材が使われていることが多く、クコの実や松の実、羅漢果、ナツメ、冬瓜、干し貝柱など、季節ごとに具材や味付けは変わるが、香港ではどこに行っても、栄養豊富なスープが手軽に食べられる。

香港では料理と一緒にスープも注文する人が非常に多い(iStock/joxxxxjo)

 もちろん、家庭でもスープは作られている。いわば「お母さんが毎日作る具だくさんのお味噌汁」のようなものだが、これがけっこう手が込んでいる。私も何度も友人の自宅でスープをごちそうになったことがあるが、家庭用のスープマシンを使ってグツグツ煮込んだスープは、素人が飲んでも「滋養がありそう」と感じるほどコクがあり、季節ごとにさまざまな具材が入っていた。日本では味噌汁のおかわりはあまりしないと思うが、香港では2杯、3杯とスープをたくさん飲む人もいる。レストランでも大きな壺に入れられたスープは「おかわり」するのが基本。香港人の食卓に欠かせないスープこそ、健康の秘訣だ。

冬は身体を温める「蛇のスープ」が人気

 今の季節の風物詩といえば「蛇のスープ」だ。蛇は冬によく食べる食材で、滋養強壮によく、貧血の人は血が増えるといわれている。私も冬に香港に行くと、なぜか蛇のスープを食べたくなる。見た目は鶏のささ身を細かくした感じで、蛇だといわれなければまったくわからない。高級料理店でも提供されるが、庶民的な店もある。食べた人は「身体がポカポカと温まって元気になる」ので、人気メニューだ。

 広東省の市場などに行くと、蛇だけでなく、檻に入れられたさまざまな小動物が生きたまま“食材”として売られていてびっくりするが、それらは「珍味」や「ごちそう」と認識されている上、多くが滋養強壮のため、といわれている。「食は広州にあり」という言葉は日本でも広く知られているが、香港を含め、中国の広東省一帯では「四つ足は机以外、空飛ぶものは飛行機以外、何でも食べる」といわれており、その通りだ。

 「珍味」ではないが、香港の市場でも、鶏などは生きたまま売られるのが普通だ。食べる前日か当日、市場で「元気な鶏」を物色し、それをさばいてもらって持ち帰る(あるいは、生きたまま持ち帰って、自宅でさばく)のだが、これも滋養強壮にいいとされ、香港ではパックに入った切り身の肉は「新鮮ではない」として、好まれない。ちなみに、香港には「街市」という伝統的な市場があちこちにあり、そこでも肉類は部位によって量り売りされている。肉も魚も野菜も新鮮であればあるほどいいので、香港の人はほぼ毎日、「街市」に通って少しずつ食材を仕入れる。スーパーもたくさんあるのだが、生活習慣なのか、食材を買いだめする人は少なく、その日の夕食のおかずはその日に必要な分だけ買う、という人が多い。

 「街市」に行くと、年老いた女性や男性が買い物をしている姿をよく見かける。スーパーやデパートと違い、「八百屋」や「肉屋」のように、自分の目で食材の鮮度を見極め、店主と会話しながら量り売りで買うところだが、毎日市場に買い物に行き、店主とコミュニケーションを取ることは、精神的な健康にとってもいいことだろう。

関連記事

新着記事

»もっと見る