使えない上司・使えない部下

2018年1月16日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

お互いが、プロなんだから。
お互いに持ちつ持たれつでないと…

 俺が全日で試合をしているとき(1986年)、長州(力)とシングルで闘った。やはり、3流のレスラーだったね。アメリカでは通用しなかった理由がわかったよ。

 試合の展開がいつも同じで、決め技がスタン・ハンセンのコピーのリキ・ラリアットしかなかった。ハンセンのラリアットと比べると、きかないよ。パワーが違う。そんなラリアットに俺は1発で倒れて、負けられないんだ。アメリカではあの頃、アンドレやホーガンと闘っていたんだ。だから、あの試合ではリキ・ラリアットを3~4発連続して受けた。そうでもして負けないと、俺のプライドが許さない。それで倒れて、ワン・ツー・スリーを数えられ、負けた。

 俺としてはいい仕事ができたと思っていた。怒ったのは、試合が終わった後だよ。試合では、俺がトップロープから飛び降りて、ダブル・ニ―ドロップを(長州に)に入れたんだ。(長州は)肩を(レフリーのフォールの)ワン・ツーで上げて、外に逃げることになっていたのに、あいつはマットに寝たまま、観客に向けて右手の人差し指を突き上げて右に左に振って、「こんな技はきいていない」というジェスチャーをわざわざ、アピールしていた。

その映像を、俺は見たんだ。ほかの選手からも、聞かされた。相手選手のフィニッシュホールドを大勢の観客の前でバカにするなんてありえないよ。そのことを試合中にわかっていたならば、リキ・ラリアットを3~4発連続して受けた後、ワン・ツー・スリーのワンで俺は立ち上がったよ。そして、「ふざけるな! お前のラリアットなんてきいていない」と怒鳴り、リングから降りたよ。そのまま(控え室に)戻ったさ。そんな試合は放棄だ。馬場さんなら、許してくれたんじゃないかな。プロなんだから、(試合中に)やっていいこと、いけないことがあるわけ。

 相手を持ち上げることで、自分も持ち上げてもらう。それでお互いで試合をつくる。それができるのが、プロだと俺は思う。長州は、それを知らないのか。知っていてやっていたならば、人間性も3流だからか…。

 あの試合でいえば、長州がベビーフェイスだったのかもしれない。それはそれでいい。役割があるんだから…。だが、観客に対してのあのジェスチャーはないよ。プロの仕事ではない。ひとりで試合をしているんじゃないんだ。俺の立場やプライドは、どうなるんだ?プロレスラーの強さって何なのかをわかっていない。

 馬場さんが亡くなる前に、俺はあの試合のことを聞きたかった。馬場さんは、プロレスをよくわかっていたからね。まさか、あんなに早く亡くなるなんて思わなかった…。アンドレは日本で俺と闘うときには、日本人の観客を意識して、俺の持ち味を引き出してくれていた。俺は、アンドレのよさや強さが(観客に)わかるような試合をした。俺はアンドレと試合をできるのが、うれしかった。

 お互いが、プロなんだから。お互いに持ちつ持たれつでないと…。(会社がひいた)レールの上を走ってきたスター選手は、そこを勘違いしているんだ。(ジャンボ)鶴田もわかっていなかった。俺が長州や鶴田に嫉妬? そんなのないよ。こういう社会だというのを俺はあいつらよりも先に入門し、わかっていたから。

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