科学で斬るスポーツ

2018年2月2日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 平昌五輪最大の関心の一つは、ソチ五輪フィギュアスケート男子の覇者・羽生結弦が、1948年と1952年の五輪で金メダルを獲得したディック・バトン(米国)以来66年ぶりの金メダル連覇を達成できるかにあるだろう。けがで本番に間に合うか気がかりだが、体もメンタルもたくましくなっただけに、身体状況に合わせた戦略を組み立てしっかり調整してくることは間違いない。20歳の宇野昌磨も国際舞台で経験と自信を積み重ねており、五輪の初舞台で思い切った滑りができれば金メダルに手が届くところにある。宇野の躍進は羽生への刺激だけでなく、プレッシャー分散の意味でもとてもいい材料だ。

 4回転ジャンプ全盛で、高得点時代に突入したフィギュア男子は、4回転の出来が勝敗を左右する。しかし、それは技術だけではない。完成度、「美しさ」「流れ」が大事な要素を占める。そこを重視した持ち味の演技ができれば、羽生の勝利の確率は高まるだろう。ジャンプ、演技の完成度、メンタルの視点で分析する。

羽生結弦選手(写真:松尾/アフロスポーツ)

4回転ジャンプ全盛

 昨年12月に名古屋市で開かれたグランプリファイナルで優勝したネイサン・チェン(米国)と2位の宇野選手の得点表(図1)とグラフ(図2)見て欲しい。宇野は0.5点の僅差で負けたものの五輪への大きな踏み台となった。

 詳細な説明をする前に、採点の仕組みを簡単に解説する。

 フィギュアスケートの勝敗は前半のショートプログラム(SP、演技時間2分40秒±10秒)と後半のフリー(演技時間4分30秒±10秒)の得点の合計点で決まる。それぞれ、ジャンプ、スピン、ステップの完成度などをみる技術点と、うまさ、流れ、リズムなどを評価するスケート技術、演技構成、振り付け、表現力、音楽の解釈の5つの演技構成点(ファイブコンポーネンツ)で採点される。

 男子の場合、技術点はSPで7演技、フリー13演技で採点される。うちジャンプの回数は上限があり、SPは3演技、フリーは8演技で、一つは最低「アクセル」ジャンプを入れなくてはならない。ジャンプ、スピンなどには選手が選んだ技の難易度によって「基礎点」があり、それに、いくつかの観点から評価する出来栄え点(GOE=Grade of Execution)が加算される。GOEは3からマイナス3まで幅広い。演技が回転不足だったり、失敗したりすれば基礎点も減点される。SP、フリーともに演技後半は基礎点が1.1倍になる。そのため4回転ジャンプを後半にまとめることが多い。演技構成点は各10点の計50点満点。フリーでは合計点は2倍される。審判は9人。

図1 グランプリファイナルにおける宇野とネイサン・チェンのSPとフリーの採点表 写真を拡大
図2 得点におけるジャンプの比重が大きいのがわかる。 写真を拡大

 このグラフから読み取れるのはジャンプの比重が極めて大きいということだろう。得点を稼ぐには、4回転ジャンプを何回成功したかが大きなカギを握る。

 宇野はフリーで4種類5回の4回転ジャンプを試みた。チェンは3種類5回の4回転ジャンプを挑んでいる。ともに後半は疲労からか回転不足と判定されたが、ソチ五輪で羽生がサルコーとトウループの2種の4回転ジャンプ2回(1回転倒)で金メダルを獲得したのに比べ、確実に4回転ジャンプは増えている。まさに4回転全盛が窺える。

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