前向きに読み解く経済の裏側

2018年2月6日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 株価の暴落が続いています。本来ならば、人々が「適正価格」だと思った所で売り注文と買い注文が均衡し、取引が成立するはずなのですが、時として「市場が壊れる」ことがあるので、要注意です。

最初は割高の修正で値下がった、「普通のこと」だったが・・・

(Drew Angerer/Getty Images)

 米国では、経済が好調な割に長期金利の低い状態が続いていました。景気が良くて企業収益が良好な一方で金利が低いのですから、株価が高いのは自然なことでした。もっとも、好調な企業収益と低い金利を前提としても、それでも上がりすぎていた(実際の株価が適正な株価を上回っていた)、という面はあったようですが。

 今回は、金利が景気に見合う水準まで上がったことが契機となりました。金利が上がれば、「株より国債を買いたい」という投資家が増えるので、株価は下がるのが自然です。「適正な株価」が金利上昇で下がったのです。それと同時に、株価が割高であった分(実際の株価が適正株価を上回っていた分)も修正されたため、株価の下落幅が比較的大きくなった、というわけです。

 景気の割に金利が低すぎた分が調整され、同時に景気と金利のわりに株価が高すぎた分が調整された、というわけですね。ここまでは、比較的普通のことでした。相場ですから多少の割高割安は頻繁に起こり、その修正も頻繁に起こりますから。

大幅株安は、「売りたくない人」の売りを強要する

 自己資金で株式投資をしている人は、買いたい時に買い、売りたい時に売れば良いのですが、そうは行かない人も多いのです。借金で投資をしている人や、他人の金を運用している人などです。

 借金で株を買っている人は、株価が暴落すると貸し手が不安になり、担保の追加や返済を要求してきます。信用買いをしている個人投資家の中には「追証」が払えなくて泣く泣く保有株を投げ売りする人が大勢出てきます。銀行からの借金で投資をしているプロの投資家も、借金の返済を迫られて保有株を売らざるを得ないかもしれません。先物取引で買い立てている投資家も、同様です。

 こうした人々は、1200円になると思ったから1000円の時に購入したのです。したがって、株価が800円に値下がりすれば、絶好のチャンスだと思って買い増しをしたいと考えるのです。それなのに、借金返済のために売らなければいけないのです。さぞかし無念でしょうが、契約ですから仕方ありませんね。

 機関投資家は、社内ルールで「一定以上の損を出したら持っている株を全部売って頭を冷やせ」と定めている場合があります。損を抱えると冷静な投資判断ができなくなるから、ということですが、このまま損が広がり続けると取り返しがつかなくなるから、という面もあるようです。

 この場合のファンドマネージャーも、かわいそうです。「損を取り返したい」「今の割安な値段で買い増せば、大儲け出来そうだ」という時に、「持っている株を全部売れ」と言われるわけですから。

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