前向きに読み解く経済の裏側

2018年2月5日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 米国の株価が大幅に下落して、市場関係者は先行きについて様々な議論を展開しています。筆者は市場予想屋ではなく、景気予想屋ですので、株価自体の予想はできませんが、経済のファンダメンタルズ(株価等を考える際に考慮すべき実体経済の基礎的条件)を考える限り、今回の株価急落は心配することではなさそうです。

(robertcicchetti/iStock)

米国の景気は拡大を続ける見込み

 景気は、自分では方向を変えません。景気が拡大して企業が生産を増やせば、そのために雇用を増やすので、雇われた元失業者が給料を受け取り、それで物を買うので物が一層売れ、企業は一層増産する、といった好循環が生まれるからです。

 景気拡大が止まって景気が下を向くケースは3つあります。第1は、海外経済の急減速で輸出が激減する場合ですが、米国の場合は日本と異なり輸出に依存する経済ではないので、よほど海外が大不況に陥らない限り、そうしたことはなさそうです。

 第2、インフレ懸念です。景気拡大が続くとインフレが心配になります。そこで中央銀行が「景気を悪化させてでもインフレを止めなければならない」と覚悟して金融を引き締めるのです。しかし今回は、インフレ率が連銀の目標値より低い状態が続いていますから、こうした引き締めは当分行われないでしょう。これについては後述します。

 第3の可能性は、バブルの崩壊です。2000年にはITバブルが崩壊して景気が悪化しましたし、2008年には不動産バブル崩壊を原因としたリーマン・ショックで世界の景気が腰折れしました。もっとも、今回は崩壊して実体経済を腰折れさせるほどのバブルが発生しているようには見えません。株価や債券価格の割高を指摘する声はありますが、それが修正された程度では、実体経済は腰折れしないでしょう。

市場が景気の自動調節機能を担うと期待

 景気が拡大を続けると、インフレ懸念の芽が見えてきます。まだまだ芽の段階ですが、市場はそれを見て「中長期的には金融が引き締められる可能性が高まった」と感じます。そこで、長期金利には上昇圧力がかかります。長期金利の基本は「予想される将来の短期金利の平均」ですから。長期金利が上がると、株価には下落圧力がかかります。「株を持っていて配当をもらうより、長期国債を持っていて金利をもらった方が良い」と考える人が増えるからです。

 つまり、将来のインフレが心配されるようになると、長期金利が上がって企業の借入金利が上昇し、設備投資を減退させることに加え、株価が下がって消費等を抑制するのです。それによって、中央銀行が引き締めを行わなくても景気の過熱が予防されるのです。

 もちろん、これだけで十分とは言えないため、中央銀行も徐々に金融を引き締めて行きますが、市場による自動調節機能と補完しあうため、引き締めは緩やかなものとなるはずです。

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