前向きに読み解く経済の裏側

2018年1月22日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 ヤマト運輸が値上げに踏み切る前には、懸念が2つあったはずです。自社が値上げしてもライバルが値上げせず、客をライバルに奪われてしまう可能性と、ライバルが追随値上げをした時に業界全体の仕事量が激減して業界全体が苦しくなる可能性です。しかし、どちらも杞憂であったようです。

(CreativaImages/iStock)

一社が値上げすると他社も値上げし、荷物量は減らない見込み

 ヤマト運輸が値上げをしたのは、労働力不足で「背に腹は代えられない」と考えたからです。自社だけが苦しい時には、値上げをするとライバルに客を奪われますが、「ライバルも似たような状況ならば、ライバルも追随値上げをする可能性が高い」と考えたのでしょう。そして、その読みは当たりました。

 ライバルの日本郵便は、値上げのタイミングが少し遅れて今年の3月を予定しているため、年末には荷物が他社から流れ込み、配達が間に合わないなどのトラブルもあったと報じられています。つまり、ライバルとしては「ヤマト運輸から客を奪おう」という状況ではなく、「追随値上げをしなければ荷物が流れ込んで来てしまうから、値上げをする必要がある」という状態なわけです。

 しかも、値上げによっても業界全体の荷物量はあまり減らない見込みなのです。ヤマト運輸の12月の宅配便荷物量が前年比6%減だったと伝えられています。10月の値上げ幅は個人向けが15%、法人向けはそれ以上でしたから、値上げ幅の割に荷物の減り方が小さかったわけです。しかも、日本郵便の値上げは3月に予定されていますから、3月には日本郵便に流れていた荷物が戻って来て、前年比の減り方はさらに縮小するかもしれません。

 これは、業界全体が15%以上の値上げをしても、業界全体の荷物量は微減にとどまり、業界全体としての利益が大幅に増える、ということを強く示唆しています。実際、ヤマト運輸はすでに増益を発表しており、日本郵便が値上げをした後には更に大幅な増益になるでしょう。各社が同程度の値上げ幅であれば、各社ともに大幅増益になるかもしれません。これは素晴らしいことです。

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