世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月19日

»著者プロフィール

 中国が経済的にも、軍事的にも、台湾を中国の望む条件で統一するということはきわめて困難である、とワシントン・ポスト紙元北京支局長のポンフレットが論じています。ポンフレットは、米国の二人の専門家の研究を例にとりながら、台湾問題についての最近の米国人専門家たちの見解を紹介しています。興味深い論評です。

 これまで、米国の専門家たちの中では、台湾の「事実上独立した国家」という地位は、いずれ中国の経済力、軍事力の増大とともに維持できなくなるとの見方が一般的でした。その代表的人物はヘンリー・キッシンジャーで、彼は台湾と中国の「再統一は不可避」と主張していました。また、米国が台湾を放棄することにより、中国との友好関係を維持することが得策である、と主張した者もいました。しかし、ポンフレットは、現在の米国の専門家たちは、中国が台湾を取れる能力をもつことには疑問を呈するようになってきた、と言います。

 他方、台湾問題は、中国にとっては、「核心的利益」の最右翼に位置する重大事です。台湾を統一することが困難であっても、独立に向かう動きを無視することは到底考えられません。そのような観点から、2020年には「軍事的手段」を用いてでも、中国は台湾を奪取しようとするだろう、との中国人の研究者の見方も一概に無視することはできないでしょう。

 現に、台湾周辺では中国軍機の活動が活発化していること、また、中国の空母「遼寧」が台湾周辺を航行して軍事的な威圧活動を行うこと、などが常態化しつつあります。

 習近平体制としては、「中華民族の偉大な復興」というスローガンのもとに、優先事項として、台湾統一を位置付けていることは、想像に難くありません。カリスマ性に欠ける習が、名実ともに毛、鄧に次ぐ指導者としての権威を確実にするためには、なんらかの実績を残す必要があります。台湾対岸の福建省で十年以上勤務した経験を持つ習近平にとっては、とくに台湾問題において目に見える実績を上げたいところでしょう。

 「台湾の歓心を買うという点では、中国の政策は失敗している」とポンフレットは指摘します。中国の打ち出す硬軟両様の方策も、台湾人の歓心を買うことが出来ず、逆に、中台間の距離は拡大する方向にあるというのが今日の実態でしょう。昨年の台湾における世論調査の結果が引用されているとおり、いまや台湾人の4分の3が中台は別の国であると考えており、両者が一つの国に属するとするものは14%にすぎません。これは、20年前の調査で、台湾人の約半数が自らを「中国人」と考えていた状況からの大きな変化を示しています。

 ビジネスの世界では、中国は台湾にとっての最大の貿易、投資の相手先で、台湾にとって中国の存在が重要であることに変わりはありません。が、台湾人にとっては、中国の実態を知れば知るほど、自由で民主主義の定着した台湾と中国の違いを認識せざるを得ません。

 トランプ政権になってから、一時、米中間において「一つの中国」をめぐり、米中間の確執が表面化しました。しかし、その後は、北朝鮮をめぐる緊張状況に対処するために、米中間の交渉・駆け引きが続いており、台湾問題は喫緊の課題としては浮上していないようです。

 ただし、今後については、台湾をめぐり米中間の緊張状況が浮上する可能性は考えられます。特に、最近、米国議会において「国防授権法」が通過したことや、「台湾旅行法」が議論されていることを見れば、それは明らかであります。日本にとっても、いかに日台間の交流の一層のレベル・アップを図るかということが今後の主要な課題となるものと思われます。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る