前向きに読み解く経済の裏側

2018年2月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 安倍晋三総理が、外国人労働者の受入れ拡大を検討すると報道されています 。「実習や留学名目で入国した外国人が労働力不足に喘ぐ企業を支えている」という実態を憂い、それなら正式に労働者としての受入枠を確保しよう、ということのようです。しかし、これは絶対に認めるべきではありません。経営者は助かるかも知れませんが、日本人労働者にとっては最悪ですから。

(Pogonici/iStock)

「労働力不足」と呼ばず「仕事潤沢」と呼ぼう(笑)

 労働力不足という言葉は、否定的な言葉で、何か悪いことが起きているような印象を与えますが、そんなことはありません。企業経営者にとって困るだけで、労働者にとっても日本経済にとっても素晴らしいことなのです。

 バブル崩壊後の長期不況を思い出して下さい。失業者が大勢いて、ワーキング・プアが大勢いて、政府は失業対策の公共投資で財政赤字を膨らませていました。それが、労働力不足になったことで、失業者問題が解決し、仕事探しを諦めていた高齢者や子育て中の主婦も仕事にありつくようになりました。非正規労働者の時給が上がり、ワーキング・プアが少しはマシな暮らしができるようになりました。自殺者数も顕著に減っています。

 ここに外国人労働者が大量に流入して、労働力不足が解消してしまえば、元に戻ってしまうでしょう。企業はいくらでも失業者を安い時給で雇うことができるでしょうが、「企業の幸せが日本経済の幸せ」ではないのです。

 労働力不足に代わる、前向きな語感の言葉を考えましょう。筆者はキャッチコピーと考えるのが苦手なので、とりあえず「仕事潤沢」と呼んでおきますが(笑)。

政府は「労働力不足なら賃上げしろ」と言うべき

 政府は、経団連に対し、賃上げを要請しています。デフレ脱却を目指しているのです。それなら、「労働力不足で外国人労働者を必要としている」と主張する業界に「賃上げして他業界から労働力を奪ってこい」と言えば良いのです。現に、宅配便業界は、値上げして賃上げして他業界から労働力を奪おうとしています。他の業界も、これを真似すれば良いのです。

 宅配便業界が教えてくれた非常に重要なことは、「自分が苦しい時はライバルも苦しいので、自分が値上げをすればライバルも値上げをする可能性が高い」ということです。ヤマト運輸が値上げをしたとき、ライバルとしては「値上げをせずに、ヤマト運輸の顧客を奪い取る」戦略も可能だったのですが、ライバル各社も労働力不足に悩んでいたので、追随値上げをしたのです。むしろ、客の奪い合いではなく、「客の押し付け合い」が起きかけているのかもしれません。

技能実習生等々にも労働基準法を守らせよ

 技能実習生等の中には、劣悪な労働条件で働かされている例も少なくないと言われています。彼らにも労働基準法は適用されているのですから 、違反している雇用者は厳しく取り締まりましょう。

 「表面上は留学生でも実態は労働者である」というケースも多いようですが、留学生は働いて良い量が決められているのですから、それを上回って労働している場合には、法律違反ですから、強制送還しましょう。

 「そんなことをされたら倒産だ」という悲鳴が中小企業から聞こえて来そうですが、そこは敢えて言います。「他社より高い賃金を払えば、労働者はいくらでも雇えるはずだ。他社より低い給料しか払えないなら、そんな企業は潰れて結構」と。

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