公立中学が挑む教育改革

2018年4月9日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

「人のせいにしない生徒」を育てるために、工藤氏は保護者に対しても積極的に学校経営に関わるよう呼びかけている。麹町中学校は生徒・保護者・教職員全員で創る学校だと言い続けてきた。

 例えば、同校の制服は「ちょっとダサい」「時代遅れ」と長年不評だった。そうした生徒や保護者の思いも受け止め、工藤氏は「経済性と機能性を重視してほしい」という注文だけ付けて、服装や持ち物などの学校のルールを決める権限をすべてPTAに委譲した。保護者や生徒が自律的に制服を決められるようにしたのだ。

「定期テスト廃止」という新たな改革も

 中学生の子を持つ保護者にとって、特に新たに3年生になる子の保護者にとっては、どうしても避けては通れない話題がある。間近に迫る「高校受験」だ。

 大企業や専門職へ進むことだけがキャリアではないと言っても、高校進学はやはり多くの家庭にとって標準的な選択。独自路線を打ち出す麹町中学校で、受験へのフォローアップが低下することはないのだろうか。多くの保護者が感じるであろう懸念を念頭に、工藤氏は「もちろん今の受験制度には勝ちにいきます。そのうえで、生徒たちが世の中に通用するようにしていきます」と語る。

 実はこの座談会に先立ち、学校から保護者全体へ、2018年度から始まる「定期テストの廃止」という新たな改革プランが提示されていた。中間テストや期末テストと聞いて、試験勉強に追われた中学校時代を思い出す人も少なくないだろう。麹町中学校ではそれが廃止される。とは言え、生徒が楽をできるようになるというわけではない。

 生徒が真の学力を身につけ、現状の受験制度に勝ち抜くために必要なものは何なのか。熟慮の末にたどり着いたのがこの改革だったという。従来の定期テストは出題範囲を生徒に明示していた。それを廃止して、代わりに年3回だった「実力テスト」を年5回に増やす。こちらは出題範囲が事前に分からないため、生徒はまさに現状の「実力」を試されることになるのだ。

 さらに国語・社会・英語・数学・理科の5教科については、より頻度の高い「単元テスト」も行われる。このテストは再挑戦も可能。1回目で50点だった生徒が2回目に挑戦し80点を取った場合は、後者を成績として採用する。間違えた箇所を見直し、分からないことが分かるようになるとともに、「頑張った分だけ成績が上がる実感」を持てる仕組みだ。

「もちろんテストが重ならないよう、スケジュールは工夫します。受け直しのやり方についても検討していますが、『先生に言われたから再テスト』ではなく、生徒が自分から『再テストに挑戦したい』と思えるようにしていきたいと考えています」

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