公立中学が挑む教育改革

2018年4月9日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

無理をして「子どもの自律スイッチ」を押そうともがく必要はない

 大人も変わらなければいけない。そんな工藤氏のメッセージに触発されてか、子育ての悩みを切々と語る保護者もいた。

 親も毎日いきいき過ごしている様子を話してあげたいし、実際の姿でも見せたい。そう思ってはいても、日々の忙しさに呑まれてしまい、子どもと良いコミュニケーションが取れていないと感じることがある。家では「勉強したの?」ばかり言ってしまう自分がいる……。

 そんな悩みに対して工藤氏は「完璧な親なんていないんですよ」と語りかけた。筆者にはこの場面で、多くの保護者の顔に安堵の表情が浮かんだように見えた。そのメッセージをぜひご紹介したい。

「大人も、自分の行動を変えるのは難しいものです。

私には2人の息子がいて、上は31歳、下は27歳になりました。今になってみれば『もっとこうすればよかった』と思うこともあります。子育てはなかなかうまくいかないし、理想通りには進まない。それでも、ときどきは『親としての理念』を思い出すことが大事だと思うんです。

私の場合は妻との間に約束事がありました。私が叱るときは、妻は子どもの視界から消え、後でフォローする。逆の場合も同じです。2人で同時に叱ることはしないと決めていました。子どもたちが小さい頃は、叱り終わった後に『ただ黙って抱きしめる』ということも必ずやっていました。

子どもが中学生くらいの年頃になってくると、親としては『ある程度の距離を置くべき?』と悩むこともあるでしょう。どこかに連れていきたい、誰かに会わせたいと親が思っても、激しく反発される。親に対してあまり面白みを感じなくなる時期というのが、どんな子どもにもあります。

そんな時期の子どもたちを見ていて興味深いことがあります。自律のスイッチが入るタイミングは、ほぼ間違いなく、親以外の誰かがきっかけになっているんです。なにげなく見たテレビの誰かに影響されて生き方を考え始めたり、友だちが勉強し始めるのを見て自分も猛勉強したり、好きな女の子から『もっと勉強すればかっこいいのに』と言われて急に頑張りだしたり(笑)。

だから大人たちは、無理をして子どもの自律のスイッチを押そうともがく必要はないと思うんです。その代わり、子どもたちにとっての良い環境を作ることに注力するべき。もし不安になってふらついたら、子どもたちのために何をすべきか、私たち教員もみなさんと一緒になって徹底的に考えます」

第1回:「話を聞きなさい」なんて指導は本当は間違っている
第2回:対立は悪じゃない、無理に仲良くしなくたっていい
第3回:先生たちとはもう、校則の話をするのはやめよう
第4回:教育委員会の都合は最後に考えよう
第5回:着任4カ月で200の課題を洗い出した改革者の横顔
第6回:“常識破り”のトップが慣例重視の現場に与えた衝撃
第7回:親の言うことばかり聞く子どもには危機感を持ったほうがいい

多田慎介(ライター)
1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

  
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