公立中学が挑む教育改革

2018年11月29日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

従来の修学旅行を見直し、社会で通用するスキルを学ぶ場として設けられた「ツアー企画取材旅行」。独自のツアー企画を考えるというミッションのもと、千代田区立麹町中学校の3年生は京都・奈良の観光スポットを訪ね歩き、世界に1冊しかない旅行パンフレットを作った。SNSからトレンドを感じ取って企画を立て、慣れた手つきでパワーポイントの資料を作り、それぞれの得意領域を生かして準備を進め、観衆を楽しませるプレゼンテーションで企画の魅力を伝える。中学生離れした力を発揮する生徒たちは、どのような学びを得て成長しているのだろうか。

 

SNSガチ勢の外国人を「#和映え」で惹きつける

「私たちが今回提案するコンセプトは『和映え』です」

 2018年10月に行われた麹町中学校の「ツアー企画取材旅行発表会」。生徒たちが次々とプレゼンテーションを行う演壇には、この日、全24チームの中から最優秀賞であるプレゼン大賞に選ばれた5人が立っていた。パワーポイントで制作されたスライドに映し出されるのは、自分たちで京都・奈良を巡り、撮り貯めた数々の写真。そしてその体験をもとに構成した「1泊2日の旅行企画」だ。

「日本を訪れる外国人旅行客の数は年々増え続け、ここ数年は特に急増しています。彼らはインスタグラムやフェイスブック、ツイッターなどのSNSを活用して、日本での思い出を写真で共有します。そこで私たちは、外国人が『#和映え』というハッシュタグ(※1)でSNSにアップしたくなるようなスポットを巡る旅行プランを提案します」
 

今どき和風が流行るのよ!!

#外国人向けSNSの旅


 スライド資料には大きな文字で企画タイトルが現れた。ターゲットは「SNSガチ勢(※2)外国人」。そしてこの企画の目的は「京都・奈良の日本らしい魅力を『#和映え』というハッシュタグで世界へ発信すること」だと説明する。

※1:特定のキーワードに「#」(ハッシュマーク)を付けてSNSの文章に盛り込むと、その投稿がタグ化される。これによって同じキーワードが含まれる投稿を瞬時に検索できるようになる。興味・関心が近いユーザー同士で話題を共有するために使われている。

※2:ある物事に全力で取り組んでいる人々を指す言葉。インターネット上で盛んに用いられている。

 ツアーは、地理に明るくない外国人でも効率的に移動できるよう、南から北へ向かうシンプルなルートで設計されている。奈良公園(奈良市)を出発し、東大寺(同)へ。京都府へ入って宇治市で抹茶ラーメンと抹茶餃子を楽しみ、七條甘春堂(京都市)で和菓子作りを体験した後は清水寺(同)を散策する。いずれも、思わず写真を撮りたくなる景色やアクティビティのある場所だ。

 これらの代表的な観光地を巡った先にある旅のゴール地点は、京都市右京区の車折神社。芸能人が芸事の成功を願って訪れ、人気アニメキャラクターを描いた玉垣なども奉納されていることから、「日本のエンタメ文化が大好きな外国人にぜひお勧めしたい和映えスポット」として選んだのだという。

外国人が喜ぶ「和映え」のゴールの地として選ばれたのは、赤い玉垣が印象的な「車折神社」

 一度聞けば忘れないであろう「和映え」というコンセプト。そして外国人旅行客の嗜好を的確にとらえたコンテンツは、発表会の審査員として参加していた大手旅行代理店の社員も思わずうならされたのではないか。

 筆者はプレゼンのクオリティの高さにも驚かされた。代わるがわるマイクを握る5人の生徒は、原稿を読むことなく、観衆へしっかりと視線を向けて語りかけている。さらにパワーポイントの資料には、見やすさはもちろんのこと、伝わりやすさを意識した工夫も数多く盛り込まれていた。

 例えば、東大寺南大門の金剛力士像を「筋肉むきむきのボディービルダー体型」と紹介し、それと比べて細身である興福寺国宝館の金剛力士像は「ダンサー体型」と表現して対比するシーンがあった。プレゼン中のメンバー以外が演壇に現れ、ボディービルやダンスのポーズを実演してみせるという一幕も。これには会場の生徒たちもどっと沸いていたのだった。

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