前向きに読み解く経済の裏側

2018年5月7日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 道徳の教科書に、監督の指示に従わなかった野球選手は結果が良くても糾弾されるべきだ、という内容が載っているようです (5月4日付「春秋」日経新聞)。少年野球は規律等を教える教育の場ですから、それで良いのでしょうが、会社でもそうなのか、議論がありそうです。

(wildpixel/iStock)

指示に逆らうより変更を提案すべし

 話の内容は、野球で送りバントの指示が出ている時に、スイングした方が良いと考えた選手が指示に従わずにスイングして2塁打を打った、というのです。結果は良かったものの、指示に従わなかったので次の試合に出してもらえなかった、というわけです。

 上からの指示に対しては、「何も考えずに従う」「自分が違うと思ったら信念に従って行動する」「自分の頭で考えて、違うと思ったら指示や規則を変えるように申し出る。申し出てもダメなら諦めて指示に従う」という3つの選択肢があります。辞表を出す、という第4の選択肢もありますが(笑)。

 まず、絶対にダメなのが黙って指示に逆らうことです。「塚崎は送りバントをするはずだ」とランナーが考えている時に筆者がフルスイングして空振りしたら、走者がアウトになってしまいます。あらかじめ「俺は指示に逆らってスイングする」と伝えてあれば、ランナーが飛び出すことは防げるでしょう。もっとも、監督にバレてバッターを交代されてしまうかもしれませんが。

 次に考えるべきことは、自分がスイングした結果、試合に負けたら、責任がとれるか否かです。この場合は責任はとれませんねから、勝手なことをするべきではありません。筆者が野球チームをやめればよい、という問題ではありません。他のチームメートや監督等を悲しませる権利は筆者にはありませんから。

規律を徹底する事が組織には必要

 人々が指示に従わないと、規律が乱れます。戦争の時、「全力で東を攻める」「全力で西を攻める」という選択肢があるとします。大将が「東を攻めろ」と命じても、半分の兵が勝手に西を攻めたら勢力が分散して負けてしまうでしょう。それでは組織としてマズイのです。兵隊が東に攻め込み、食料補給部隊が西へ移動するのはさらにマズイですが(笑)。

 全員がチームのため、軍隊のために真剣に考えて命令に逆らう場合も問題ですが、各自が自分のエゴのために命令に逆らうようになると最悪です。組織が命令違反を徹底して糾弾する体制を整えておかないと、そうした問題が出てくる可能性があるのです。

 たとえば、筆者の野球チームは監督の指示に従わずに自分で考えて行動することが許されているとします。筆者は何を考えるでしょうか。

 「スイングをしてヒットを打てれば、ヒーローになれる」

 「スイングをして失敗して試合に負けても、皆が少しずつ悲しむだけで、自分の悲しみはそれほど大きくない」

 「つまり、スイングすることは、成功すれば自分だけが非常に嬉しい、失敗すれば皆が少しずつ悲しい、という賭けをすることになるのだ。それならスイングしよう」

 と、考えるかもしれません。それでは筆者以外のメンバーはたまったものではありませんし、もしかすると誰も送りバントをする選手がいなくなるかもしれません。

関連記事

新着記事

»もっと見る