Washington Files

2018年5月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「下院は絶対死守せよ」。トランプ大統領が最近、11月中間選挙に向けて共和党幹部たちに“緊急指令”を出したことが、ワシントン政界で大きな話題となっている。もし、下院を民主党に明け渡した場合、自らが渦中にあるロシア疑惑捜査の結果、弾劾にさらされかねない最悪の事態を心配したものだ。 

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 今回の中間選挙のうち、下院で民主党が多数を制するためには、現有勢力(193議席)からさらに23議席上積みする必要があり、最新の政治専門誌の動向調査によると、現段階で共和党現有勢力(240議席)から8議席が民主党に移る可能性が高く、さらに22議席で民主党が互角の戦いを進めている。そして全体として、下院に関する限り、共和党は敗色を濃くしつつある。

 一方、全議員100人のうち3分の1だけが改選される上院では、共和党は現有勢力では2議席だけの僅差で多数を維持しているものの、改選議席数では民主党が26議席に対し共和党は9議席のみとなっていることなどから、よほどのことがない限り、民主党勝利は困難とみられている。

(vinap/iStock)

 従って、問題は下院の趨勢だが、もし、民主党が勝利すれば、トランプ批判の急先鋒として知られる大物女性議員ナンシー・ペロシ女史の下院議長返り咲きが確実となるほか、ロシアゲートを調査してきた下院情報活動委員会そして弾劾審議の最初の関門となる司法委員会も民主党議員が委員長に就任するため、トランプ氏個人にとっても大いに気がかりとなる。

 こうした選挙情勢分析結果と米議会動向を踏まえて出されたのが、「下院死守」の大統領号令だった。

 そしてその背景にあるのが、大詰めを迎えつつあるロバート・モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査と、もうひとつの大統領セックス・スキャンダルをめぐるFBI捜査にほかならない。

 まず、ロシアによる2016年米大統領選介入とトランプ陣営との関わりをめぐるいわゆるロシア・ゲートだが、特別検察官当局はこれまでの捜査を通じ、すでに米国内外の関係者17人の起訴を公表している。このうち注目されるのは、ポール・マナフォート前トランプ選対本部委員長、同氏のビジネス・パートナーのリック・ゲイツ氏、ジョージ・パパドポロス元トランプ選対本部顧問、それにマイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障担当)の4人で、いずれもトランプ氏とは選挙期間を通じ意気投合した間柄だった。

 また、この4人のうち、マナフォート氏は未明に自宅とオフィスの強制捜査を受け、関係書類、パソコン、スマートフォンその他の電子ファイルを大量に押収されたほか、パパドポロス氏は選挙期間中、選対本部関係者とロシア要人たちとの少なくとも6回におよぶ秘密接触をアレンジした容疑をすでに認め、フリン氏も、駐米ロシア大使との密談に関する偽証容疑を認めた上でその後は、当局の捜査に積極的に協力姿勢を示している。

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