Washington Files

2018年5月3日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。現在、神田外語グループ参与。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 ワシントン政界は今、FBIがトランプ大統領側近で顧問弁護士の強制捜査に踏み切ったことを受け、今後のなりゆきをめぐり話題騒然となっている。大統領は昨年5月、ロシア疑惑を捜査中だったコミーFBI長官を解任したが、最近FBIが、過去何年にもわたるトランプ氏の公私にわたる活動やビジネスに深くかかわってきた核心人物の家宅捜索に踏み切ったことに激怒、FBIとの対決色を一層あらわにし始めた。

 去る4月9日(月)早朝、FBIの捜査官たちが突然、何の前触れなしにマイケル・コーエン顧問弁護士の自宅、オフィス、長期滞在用のホテル自室を急襲、段ボール10箱分の関係書類、コンピューター・ファイル、メールやりとりのコピーなどを押収した。この中には、使用済みの私用携帯電話16本まで含まれていたという。

4月26日、ニューヨークの連邦地裁から出てきらマイケル・コーエン氏 (Photo by Spencer Platt/Getty Images)

 コーエン氏は最近、トランプ氏が以前に性的関係を持ったとされる元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズさんに対する口止め料として13万ドルを支払ったことを認めたばかりだったが、その資金の出所や他の同氏のビジネス取引に対する疑惑が捜査対象となったとされる。今回の強制捜査は、ロシア疑惑と直接関係はなく、2016年米大統領選に介入したロシアとトランプ陣営との共謀の有無について捜査中のモラー特別検察官側からの照会に基づくものだった。

 このニュースをテレビ報道で初めて知ったトランプ氏は、ただちに「(家宅捜索は)とんでもない面汚しの行為であり、本人のみならずわが国に対する攻撃だ」と語気を強めてFBI批判を繰り返した。その後もトランプ氏のFBIを目の敵にした異常ともいえるツイッター発言はあとを絶たない。

 そもそも、弁護の対象がどんな人物であれ弁護士自身が家宅捜索を受けること自体、極めて異例であり、通常、弁護士は法律上の「弁護士―顧客特権」で身分は保護されるのが普通だ。従って裁判所も簡単に捜索令状を出すことは本来ありえない。しかし、今回コーエン氏のように、「顧客」であるトランプ氏との関係とは別に、本人の個人的行動自体が極めて犯罪性が高いと判断された場合、この特権は適用外とされ、捜査当局は裁判所から令状をとりつけるだけの十分な裏付けを事前に得ていたとする見方が有力だ。

 しかし、トランプ氏は「強制捜査は自分とコーエン氏との弁護士―顧客特権を踏みにじる許すべからざる脱法行為だ」として、その後もFBIに対する執拗で過激ともいえる反発をあらわにしている。

 その背景にあるのが、コーエン氏と大統領との特殊な関係だ。

 2人の関係は十数年前にまでさかのぼり、コーエン氏はトランプ氏がロシア、アジア、中東諸国で不動産買収、ホテル、カジノ建設などの事業に乗り出していた際に最も頼りにしていた弁護士であり“腹心”だった。一昨年、大統領選出馬に際しても、早くから資金調達などの面で最も信頼厚い相談相手となってきたほか、選挙戦途中で、トランプ氏の数々のセックス・スキャンダルが暴露され、ピンチに立たされた際も、献身的に火消し役に回ったことでも知られる。

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