Washington Files

2018年5月3日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 また、コーエン氏については、米大統領選最中の2016年秋、チェコの首都プラハを極秘訪問、その際に、プーチン・ロシア大統領側近のコンスタンチン・コザチェフ氏と密会していたことを特別検察官チームが把握済みとされ、すでに一部米紙にリークのかたちで報道されている。もし、これが事実とすれば、そのタイミングから見てコーエン氏が自分個人のたんなるビジネス目的だけでプラハ入りしたとは考えにくく、トランプ氏本人も承知していた可能性は否めず、疑惑が一層深まることになる。

 さらに米マスコミが注目するのは、コーエン氏がかねてから友人、知人との重要な電話でのやり取りの際に、きまってその一部始終をひそかに録音し、テープを保管する習慣があったとされ、今回のFBIによる家宅捜索でその大半が押収されたことだ。これらの残されたテープの中には、大統領とのさまざまな会話内容も含まれている可能性が大きい。

 このためトランプ・ホワイトハウスの弁護士チームは、これらテープなどの重要押収証拠品の今後の扱いについて、FBIからそのまま検察側に渡ることを何としても阻止すべく、あわただしい動きを見せており、すでにニュヨーク連邦地裁判事に対し、証拠品の事前閲覧請願を提出したばかりだ。

 これに対し検察側は同判事に、即時入手できるよう要請しており、今後、連邦地裁が押収証拠品の扱いについて、最初に検察への引き渡しを命じるのか、あるいはそれがコーエン氏個人の行動と疑惑に関連したものだけに限定されるのか、そして、コーエン氏捜査関連以外の、大統領とのやりとりなどの証拠品は封印するのか、あるいは弁護団側にまず事前閲覧を許可するのか、果たしてどのような具体的判断を下すのかについて、大きな関心が集まっている。

3つの焦点

 今後の焦点としては、1.コーエン氏の正式起訴。2.起訴された場合の寝返りの可能性。3.大統領としての対応、の3点にしぼられてきている。

 まず、起訴の可能性については、これまで捜査当局がコーエン氏の個人資金の流れ、銀行取引、大統領選関連の資金の使途などをめぐる違法性を立証するだけの十分な証拠をすでに固めているとされることから、その公算はきわめて大きいと判断される。さらに、FBIによる強制家宅捜索を認可した連邦地裁判事は、慣例上、弁護士が捜査の対象から免れる「特権」があたえられることを十分理解したうえで、あえて事件の重要性にかんがみ令状を出していることから、ワシントンの検事出身のベテラン弁護士の多くが、今回の措置は初めから本人が起訴されることを念頭にしたものだった、との見方をとっている。

 次に、起訴された場合、これまでトランプ氏に10年以上にわたり忠誠を尽くしてきたコーエン氏がどこまでトランプ氏の立場を擁護し続けることができるかだ。

 そのトランプ氏自身は、家宅捜索のニュースが流れた直後、自らのツイッターで「マイケルはグッドガイだ。何ら悪いことはしていない」と弁護する一方、「彼自身が私のためにやってきた仕事は全体のほんの一部にすぎない」と早くも距離を置く発言もしている。

 一方、ブルームバーグ・ニュースは、コーエン氏自身が表向き資産家として派手な生活をしているものの、実際には妻との税務関係の共同ビジネスがうまくいかず、かなりの借金を抱えていることなどを指摘、裁判開始となった場合、高額の弁護士費用の負担に耐えられず、寝返って司法取引に応じる可能性にも言及している。

関連記事

新着記事

»もっと見る