オトナの教養 週末の一冊

2018年5月11日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――彼らに憧れることで、道を踏み外さずにいる若者がいます。他に不良の子どもたちを更生させようとする動きはあるのでしょうか?

磯部:川崎は問題が多いからこそ、社会運動も盛んに行われてきました。

 例えば、差別問題。桜本にある川崎教会の初代牧師・李仁夏(イ・インハ)さんは、娘を幼稚園に預けようとした際、在日コリアンの子どもは預かることが出来ないと拒否された苦い経験を経て、69年に桜本保育園を開設しました。ただし、そこで重要なのは、新しい保育園では在日コリアンの子どもだけではなく、地元の共働き世帯全てへ門戸を開いたことです。それが、川崎における多文化共生の原点のひとつになっていると言ってもいいでしょう。その後、李さんが理事を務めた社会福祉法人・青丘舎は、桜本に社会教育館と児童館の統合施設・ふれあい館を設立します。ここは、様々なルーツを持っていたり、問題を抱えた子どもたちの拠り所となっています。

 近年、ヘイト・スピーチに対抗するアクティヴィズムが注目されていて、後者はある意味で旧来的な左翼運動への「カウンター」という側面もあると言われていますが、桜本ではヘイト・デモの標的になった際、新興団体のC.R.A.C. KAWASAKIと、青丘舎の人たちが自然と協力していたのが印象的でした。川崎では脈々と反差別運動が行われているんですね。

――本書を読んでいると、社会運動だけでなく、人々の助け合いであったりと臨海部には、現在は多くの場所で機能していないと言われている地域コミュニティが非常に機能していると感じました。これはどうしてでしょうか?

磯部:外国人市民に関して言うと、彼らが集住という形を取るのは、不慣れな「外国」ではやはり同胞が頼りになるからです。そもそも、川崎区には古くから工場地帯として様々な場所から労働者を受け入れ、共生してきた歴史があります。近年は臨海部も他の土地と同様、地域コミュニティが弱体化しつつあるとは思いますが、それでも、ふれあい館のように歴史を継承してソーシャルワークに取り組んでいる人は多いと思います。

――そのなかで、学校などで海外にルーツを持つ子どもに対する差別はないのですか?

磯部:当然、あります。ただ、現在、日本で問題になっているヘイト・スピーチは、「外国人」と交流がないからこそ起こっているという側面もあると思うんですよね。

――身近にいない、接していないからこそ、彼らに対し不安を抱いている。

磯部:そうですね。一方、臨海部ではクラスメイトに、海外にルーツを持っている子どもがいることは珍しいことではないですから。さらに、近年は異なったルーツを持つ人たちが結婚して、子どもをもうけたりすることも増えている。

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