中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年5月29日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

猛スピードで変化する社会の中で、中国人は“癒し”や“やすらぎ”を求めている。そのひとつが、大流行している農村へのプチ旅行『農家楽』だ。

和気あいあいとした雰囲気で食事を楽しめる「農家楽」

夜だけ農家レストランに行くことも「農家楽」

 「今夜はみんなで農家楽へ行きましょう!」

 浙江省杭州市。風光明媚な西湖など国内有数の観光地を擁する杭州は富裕層が多いことでも知られる。上海からも高速鉄道で1時間ほどの距離なので、杭州市内はもちろん、上海などからも「農家楽」にやってくる人が増えている。

 私も仕事で杭州に滞在中、友人から農家楽へと誘われた。私は杭州郊外にある自然豊かなプチホテルに滞在したことはあったが、本格的な農家楽に行くのは初めて。基本的に、農家楽とは、都会の人々が農村に泊まったり、農村の自然を満喫したりする日帰りツアーや1~2泊の旅行を指すものだと認識していたのだが、夜だけ農家レストランに食事に行くことも「農家楽」と呼ぶらしい。

 宿泊していたホテルは市内の大型ホテルだったが、そこから友人たちと数台の車に分乗して出発。20分ほどで到着するという話だったが、クルマは暗闇の中で何度か同じ場所をぐるぐる回った挙句、停車。運転手が農家レストランに電話を掛けて道を確かめているのだが、標識も看板もなく、街灯もほとんどなく、真っ暗闇。窓からわずかに民家が見えるのだが、誰も見えず、道を聞くこともできない。ナビがあっても、すでにナビは機能せず……。運転手は何度か道を行ったり来たりしながら、ようやく目的地である農家レストランにたどり着くことができた。杭州は大都会だが、そこは確かに農村といった雰囲気だった。

 農家レストランの名前は『杭州宋氏生物科技有限公司』。何やら、レストランらしくない名称だが、そのわけを知ったのは、少し時間が経ってからだ。暗闇からいきなり建物の中に入ったので最初は気がつかなかったのだが、農家レストランというよりも、そこは数階建てのビルで、1階部分が個室に分かれたレストランになっていた。

 私たちのために用意された個室には、円卓が6つ。すでにほとんどの料理が並べられていた。地鶏、川海老、椎茸、タケノコ、きくらげ、野菜の和え物、揚げ豆腐、豚肉の角煮、川魚の姿蒸しなど。地鶏と薬膳のスープは、全員が着席してから、熱々の大鍋が運ばれてきて、中心に置かれた。すべての食材が地元で採れた新鮮なもので、いわば地産地消。お酒はビールや紹興酒、ワイン、ウイスキーのほか、野ぶどうを使った生ジュースなど珍しい飲み物も用意されていた(味はかなり薄く、野生っぽい味がした)。料理数は全部で15~16品。飲み放題で、1つの円卓に約10人ずつ座った。乾杯のあと、同レストランの社長、宋益媛さんがあいさつに立った。

地元の新鮮な食材を使った農家料理

関連記事

新着記事

»もっと見る