WEDGE REPORT

2018年6月7日

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真田康弘 (さなだ・やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員/客員准教授

早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授。神戸大学国際協力研究科博士課程前期課程修了(修士・政治学)。同研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。大阪大学大学教育実践センター非常勤講師、東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータを経て、2014年より現職。専門は政治学、国際政治史、国際関係論、環境政策論。地球環境政策や漁業資源管理など幅広く研究を行っている。著書に『A Repeated Story of the Tragedy of the Commons: A Short Survey on the Pacific Bluefin Tuna Fisheries and Farming in Japan』(早稲田大学、2015年)、その他論文を多数発表。
 

 日本の水産業の衰退が止まらない。2016年の漁業・養殖業生産量はピーク時の3割以下に落ち込み、1961年には約70万人だった漁業就業者数も15万人まで減少した。衰退の最大の要因の一つは資源管理を怠ったことにある。

 持続可能な漁業に転換するためには抜本的な見直しが必要だが、水産予算の内訳を見ると、資源管理は冷遇され、漁港整備に重きが置かれていることが分かる。昨年12月に閣議決定された今年度の水産予算1772億円のうち、資源管理・調査への予算は46億円で予算全体の3%である一方、約40%の700億円が漁港整備などの一般公共予算に充当されている。

(出所)水産庁資料を基にウェッジ作成 (注)2018年度水産関係予算概算決定の主要事項の金額 写真を拡大

 漁獲量も漁業従事者も減少する中、なぜこれだけの額が漁港整備に費やされているのだろうか。国は漁港漁場整備長期計画を5年ごとに策定し、これをもとに全国各地の漁港整備を進めているが、現場の実態を見ると、それが漁業の発展に繋(つな)がっているか、大いに疑問と言わざるを得ない。

公募開始後10年以上が経過するも
いまだに「空き地」と化した埋め立て地

 神奈川県三浦半島の南端に位置する三浦市。冷凍マグロ類の取引が有名な三崎魚市場から西側に目を向けると広大な埋め立て地が広がっている。

 三崎漁港に隣接するこの二町谷地区の埋め立て地は、水産加工場等の集積を目的として2003年に総事業費145億円で整備された。面積は13万8000平方メートル(東京ドーム3個分)で、1万トン級の漁船が着けられる水深10メートルの岸壁などが整備された。この埋め立て地は2007年4月より分譲が開始されているが、いまだにほぼ全面が空き地で立ち入り禁止になっている。

総額145億円をかけて整備された三浦市二町谷地区の埋め立て地。だが、利用希望事業者がほとんど現れず、大部分が立ち入り禁止の空き地となっている (写真・Wedge)

 数年前まで市内で魚屋を営んでいた男性は、「あのあたりは風が凄く強く、波も高いことは漁師の間では有名な話。越波して海水が入り込んでくる可能性もあり、あの地区を使いたいという業者が出てこないことは、計画段階から分かっていたことだ」と苦笑いする。

二町谷の埋め立て地周辺は、風が強く越波して海水が入り込んでくる可能性があることは漁師の間では有名だった(写真・Wedge)

 分譲開始後、使用が決まった事業者は1者のみで、他に希望者が現れなかったため、市は16年7月から水産関係以外の目的でも利用できるよう条件を緩和して募集を行った。結果、新たに3者が加わったものの、埋め立て地全体の使用状況は2%にすぎない(今年4月末時点)。そんな中、台風により度々護岸や背後の用地の一部が被災し、現在も修復作業が行われている。埋め立て後も、こうした修復費用に加え、整備時の土地購入費の返済で毎年5億円が市の財政負担となっている。

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