WEDGE REPORT

2018年6月14日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 しかも、ドレミングの勤怠管理システムでは、労働者の賃金が支払われる段階で、社会保障費や税金が天引きされ、またローンを抱えている場合は、まずローンの返済金額が事前に引かれる仕組みになっている。雇用先にとっては、これほど安心できるシステムはない(下図参照)。

(出所)ドレミングの資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 給与の前払いシステムは数多く存在するが、現金により払い戻す場合がほとんど。しかも、これほどまでにきめ細やかな、しかも雇用先にも安心を与えるシステムは世界でも見当たらない。さらにユニークなのが、労働者から一切手数料を取らない点であろう。ドレミングの儲けは同社のアプリを導入する企業からの手数料だけだ。その視線は、徹底して銀行カードやクレジットカードを持たぬ金融難民と呼ばれる労働者に寄り添おうとしている。

 ドレミングの親会社である「キズナジャパン」の創業者・高崎義一がドレミング英国のCEO(最高経営責任者)である息子の将紘を伴い、サウジアラビアを訪問したのは昨年秋。米ポートランド州立大学を卒業後、会計事務所「アーンスト・アンド・ヤング」のコンサルタント部門で働いていた将紘はドレミングの海外展開の要だ。2人が招かれたのはサウジ政府主宰の「未来投資構想会議」だった。

「社会貢献」など関係なし
サウジが企む「新商法」

 世界から錚々(そうそう)たるメンバーが集まる中、世界的にはまったく無名の日本のベンチャー企業には世界最大の国営石油会社「サウジアラムコ」(時価総額およそ210兆円)が並々ならぬ関心を寄せていた。高崎らは、サウジ国内の労働者の半分以上は海外からの労働者であり、給与の支払日ともなれば数少ないATM(現金自動預け払い機)の前には数時間並ぶような実情も知る。ドレミングのシステムが十分に活用される可能性は十分だった。

 ところが、サウジアラムコ、つまりサウジ政府の思惑は高崎らの思惑のさらに先を行っていた。

 「君たちのシステムは素晴らしい。潜在的なポテンシャルはこちらも十分に認識している。けれども、『ドレミング』って会社を知っている人間は世界にどれだけいる? 信用力の問題はどうだ?」

 サウジ政府の担当者の言葉だ。高崎らもこの2つの点、知名度と信用力の問題は解決しなければならないと認識していた。

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